中外日報賞は「大丈夫だよ」
今回はお寺の関係者なら皆さん購読されている2つの業界紙が選んだ受賞作をご紹介します。
まずは「中外日報」。明治三十(1897)年に「教学報知」として創刊された老舗紙です。毎週3回、火・木・土曜に発行されており、人事情報などが豊富で私も愛読しています。
受賞作「大丈夫だよ、生きていけるよ」は第29回で掲載しました。「中外日報」の講評に、この標語のパワーが余すところなく表現されています。
お寺の門の前を、さまざまな人が通ります。生きてゆくのが辛く、苦しい気持ちを抱えた人がこの言葉と出合ったら、「大丈夫だよ」と、背中を押された気持ちになり、前へ進む勇気が湧いてくる。そんな言葉です。
「掛けかえると門徒さんから戻してくれと言われてしまい、10年以上掛けかえられない標語です。ある意味、お寺の標語になっています」とご住職。
お寺のキャッチコピーのような一言を見い出した真宗大谷派の正徳寺は、旧品川宿にあり、13世紀末に開基されたという古刹です。お近くの方はぜひ一度生の掲示板を見てみてください。
仏教タイムス賞は「欲望を拝んでいませんか」
仏教タイムスも、主としてお寺の関係者が読んでいるこちらは週刊の新聞です。昭和二十一(1946)年夏に、原爆が投下された広島で、宗派を超えた仏教伝道の機関紙として創刊されています。
「本当に神仏を拝んでいますか 欲望を拝んでいませんか」
こちらは香川県坂出市の瀬戸大橋を望む田園地帯の中に立つ浄土真宗本願寺派の清立寺(せいりゅうじ)の標語です。
編集長からは、「有効なのは、『神仏』です。もう一つは、遊びです」という含蓄に富む講評をいただきました。
私なりに解釈しますと、ともすれば己の欲望で神仏を拝んでいるのではないか、大切なことは神仏に真摯に向かい合うことなのだよ、という本筋をついた指摘だと思います。
こちらもご住職にお話を伺いましたが、この標語は地域のお寺で決められた標語だったそうで、やはり恐縮されておられました。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)