2018年の5月、わずか半年前に『「中国経済は共産党がすべてコントロールしている」という誤解』でレポートした深セン・蛇口の改革開放博物館が10月にリニューアルされた。リニューアルの直後に習近平国家主席が蛇口を訪れているが、最高権力者に忖度したのか、改革開放博物館の内容が党の指導を前面に押し出したものに変わっていた。(メイカーフェア深セン/シンガポール 高須正和)
改革開放でなく
党の指導
中国の爆発的な経済成長を促した改革開放が、大成功した政策だったことを疑う人はいない。ただ、前回のレポートやさまざまな調査で見られるとおり、その改革開放は、毛沢東時代の「大躍進政策」という行き過ぎた計画経済の失敗の反動として出てきたもので、むしろ「職業選択の自由」「作業の進捗に応じた賞与金」など、それまでの計画経済になかった個人の創意工夫を引き出すものだった。
トウ小平(トウの字は登におおざと、以下同)ほか当時の指導部は、個人が創意工夫する余地を作り、それに対する抵抗勢力から起業家たちを守り抜いたこと、深センに代表される特区を使って徹底的な規制緩和を行ったことで評価されている。