これを具体的に考える素材としては、2016年に日本で公開されたイギリスと米国の合作映画『世界一キライなあなたに』があります。

 主人公はイギリスの田舎町に暮らすルイーザ・クラーク、通称ルーという若い女性(エミリア・クラーク)。勤め先をクビになり、大富豪の家で働き始めるのですが、その仕事はウィル・トレイナー(サム・クラフリン)という青年の身の回りを世話することでした。

 ウィルは バイクに跳ねられて半身不随の車いす生活となり、完全に心をふさいでいました。当初、ウィルはルーにも冷たく接するのですが、ルーの天真爛漫な行動と言動に心を開くようになり、やがて2人は惹かれ始めます。

 ただ、ウィルはある計画を持っていました。それはスイスに行き、自殺ほう助を受けることです。映画では実在する「ディグニタス」という自殺ほう助団体の手紙も登場します。

 これに対し、ルーはウィルを旅行に連れ出した上で、 「私があなたを幸せにするから」と説得するのですが、ウィルは以下のように話します。

「いくら楽しくても元の人生とは違う。(略)事故の前は本当に人生を楽しんでた。こんな状態で生きられない」

 さらにウィルは、ルーへの愛情を表現できないことに耐えられないとした上で、「朝起きて まだ生きていることに落胆したくないんだ」と告げます。ウィルにとって、ルーとの出会いは人生の希望につながった半面、彼の絶望を深める側面も持っていたのです。

 結局、映画のエンディングでは、ルーがスイスで自殺ほう助を受けたことをうかがわせるシーンがあります。

自殺ほう助の様子を
細かく描いた映画

 実際に命を絶つ様子を細かく描いた映画としては、2013年に日本で公開されたフランス映画『母の身終い』があります。

 主人公のアラン・エヴラール(ヴァンサン・ランドン)は服役から帰ってきた無職の中年男性。就職活動がうまくいかず、同居する老母イヴェット・エヴラール(エレーヌ・ヴァンサン)と衝突しています。