死ぬ間際の医療方針
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古今東西の映画を通じて、社会保障制度の根底にある考え方や、課題などを論じていく連載「映画を見れば社会保障が丸わかり!」。第19回は1993年製作の『大病人』、2007年製作の米国映画『最高の人生の見つけ方』の描写を通じて、終末期医療やACPと呼ばれる事前指示書を取り上げます。(ニッセイ基礎研究所准主任研究員 三原 岳)

終末期医療の方針を示す書類を事前に作り
希望に沿った医療を受けられるように

 ACPという言葉をご存じでしょうか。これはadvance care planningという言葉の略称で、日本医師会が今年4月に取りまとめた資料によると、「終末期においても患者の尊厳ある生き方を実現するためには、患者の意思が尊重された医療及びケアを提供することが重要」と説明しています。

 要するに、患者が終末期医療の方針を示す書類を事前に作ることで、その人の希望に沿った医療を受けられるようにすることを目指しています。

 厚生労働省はACPの普及を促すため、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を2018年3月に改定したほか、医療機関に支払われる公定価格(診療報酬)を同 4月に改定した際、事前指示書を取得した医療機関に対してボーナス(加算)を支払う制度改正も盛り込みました。

 それにもかかわらず、ACPは国民に浸透していません。民間シンクタンクの「日本医療政策機構」の世論調査によると、ACPを知っている人は10.8%にすぎず、終末期について話し合ったことがある人も25.4%にとどまっているとのことです。そこで、厚生労働省はACPの定着に向けて「愛称」を募集しています。こうした取り組み自体、一層増える高齢者の「死」が日常化する中で必要なことかもしれません。