夜が明け、朝になり、私が病室を訪れたとき、ムラカミさんはすでに息をしていませんでした。

 私は「えっ、一人で逝っちゃったの?」と思いましたが、すぐに「いや違う」と感じました。
 ムラカミさんの表情がとても穏やかで、まるで微笑んでいるように見えたからです。

「ああ、きっと、お母さんが迎えに来てくれたのですね……」

 私はふとそう感じ、寂しさの中にも、ホッとするような救いをもらいました。

「死とは人生を映し出す鏡のようなもの」と言います。
 人の死を輝かせてくれるのは、生を輝かせてくれた、愛し愛された人たちのおかげです。
 愛された記憶と愛した記憶……。
 それさえあれば、人は本当に安らかな最期を迎えられるのです。