誰もが一度は苦しんだ経験があるであろう「便秘」。特に高齢者にとって、便秘は、命に関わる病気であり、決して侮ってはいけないのだという。実は恐ろしい便秘について、横浜市立大学大学院医学研究科の中島淳教授に聞いた。(清談社 福田晃広)
便秘は高齢者がなりやすい
日本には1000万人の患者が!
まず中島氏は、便秘の定義をこう説明する。
「大きく分けて2つあります。まず1つ目は排便回数の低下。だいたい1週間で3回未満の排便なら異常だと思うべきです。2つ目は、排便困難症状といわれるもの。こちらの症状で悩む患者さんが多いようですが、これは便が固いため、一気に出し切ることができず、強い残便感がある状態を指します。どちらか、もしくは両方の条件を満たすと便秘といえます」(中島氏、以下同)
日本の便秘患者は約1000万人程度いると推定されている。一般に便秘は女性に多い症状だと思われがちだ。確かに2013年の厚生労働省国民生活基礎調査によると、便秘に悩む人は、60歳までなら男性よりも女性が多い。ただ、加齢とともに男性の有病率も増加し、80歳を超えると男女差がほぼないという統計が出ている。
高齢になるほど、便秘になりやすいということのようだが、ではなぜ加齢につれて、便秘になりやすくなるのか。その理由を中島氏は以下のように語る。
「単純に食事量が減ることと、運動不足もありますが、根本的な問題として、年を重ねると、どうしても消化管や腸の働きが老化し、十分に機能しなくなる影響が大きいです」
便秘が若い女性に多いといわれるのは、単なる印象だけでなく、女性ホルモンの影響で腸の動きが遅れるためだという。そして、50歳を過ぎるころには、閉経して女性ホルモンがなくなるので、男女差がなくなるというわけだ。