ワシントンで開かれたG8(主要国首脳会議)は、ギリシャの再選挙に干渉するような文言を首脳宣言に盛り込んだ。
「ギリシャがユーロ圏に残ることへの我々の関心を確認する」(外務省仮訳)という表現で、「離脱するなよ」と念押ししたのである。世界のリーダーが束になって、他国の有権者に口を挟む。サミットも軽くなった。首脳たちは、「民意」が世界の秩序を壊すことを恐れている。
世界が抱える問題を、大国の親分衆が集まり、腹を割って話し合う。それがサミットの原点だった。その始まりとなる政府高官の会議は1973年、変動相場制が始まった年に開催された。石油ショックもこの年に起きた。一国で済まない危機を、「文殊の知恵」で打開しようとしたのがサミットで、話し合うことに意味があった。
いまのサミットは、にぎやかなパーティーに変貌した。メンバーは増え、熟議は霞み、社交と政策宣伝が幅を利かす。首脳が考えを深める場ではなく、民意にアピールする舞台になったのである。
とどまるも離れるも
痛みを伴う選択
今回はギリシャへのメッセージが中央に掲げられた。「誤った選択をしてはいけない」、である。もともと大国の利害に沿って、世界経済を運営することがサミットの狙いだった。ギリシャ国民がどう考えるか、は二の次である。「ユーロ体制」がギリシャごときに振り回されては困る。ギリシャは「ユーロ体制のアキレス腱」であり、処理を誤ると地獄の釜の蓋が開いてしまう。救済はギリシャ国民の問題でなく、世界の秩序を護る正念場なのだ。