最も譲れないことは何か?
――[4]流れに対抗する根本主義(ファンダメンタリズム)
[3]は空気=前提をできる限り排除した形で考えることでした。
一方で、排除できない前提に対して、打破する力を強化することで突破することも、山本氏は提示しています。
『「空気」の研究』第3章では、「根本主義(ファンダメンタリズム)」というキーワードが頻繁に出てきます。詳しくは次項で解説しますが、これは共同体、集団、民族の最も譲れない原点を基に、現状の拘束に対抗することを意味します。
15世紀に行われた宗教改革で有名なマルティン・ルター。世俗の権力すら握っていた当時の教皇の権威に、彼は「聖書」を譲れない原点として抵抗しています。
根本主義(ファンダメンタリズム)の利用は、集団の「最も譲れない原点」を基に、ある種の前提や既存の流れを打破する行動なのです。
この根本主義は、個人の人生でも意味を持つ場合があります。
日常では人生を支える多くのものが「どれも大切」に思えます。しかし、一大事が起きたとき、あなたは何を最も重要なものと考えるか。
仕事が重要でも、健康を失えば二度と職場復帰はできません。何が自分たちにとって一番大切なことか。最も譲ることができない根本は一体何か。
この問いと、それに続く思考と決断は、人生における些末なことを発見して、さまざまな拘束から私たちを解放してくれる効果を発揮するのです。
(この原稿は書籍『「超」入門 空気の研究』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)