日本の高度経済成長は、米国の戦略でもたらされた「奇跡」

 日本が「普通の国」になる前のことを考えてみたい。この連載では、「米国第一主義(アメリカファースト)」について何度も論じてきた。ドナルド・トランプ米大統領は、2017年1月の大統領就任後、「北朝鮮ミサイル危機への介入」(本連載第184回)、「エルサレムをイスラエルの首都と認定」(第173回)、「イラン核合意からの一方的離脱」(第187回)、「中国、トルコ、イランに対する経済制裁」(第191回・P.2)と、次々と政策転換を進めてきた。そして遂に「米中経済戦争」(第201回)に至った様は、米国が「世界の警察官」から「世界の暴力団」に変わったと言っても過言ではないほどだ(第181回・P.4)。

 米国の変化は、アメリカファースト以前の国際社会が何だったのかを考える契機でもある。それは、「世界中の国が、米国に守ってもらい、米国市場で儲けさせてもらって経済成長した国際社会」だった(第150回)。

 米国が「世界の警察官」を務め、「世界の市場」となったのは、そもそもはソ連・中国共産党の共産主義ブロックに対抗するための戦略だった。米国は、共産主義の拡大を防ぐための地政学的な拠点を同盟国とし、米軍を展開して同盟国の領土を共産主義の軍事的脅威から防衛すると同時に、海軍を世界中に展開して、同盟国のエネルギー資源確保も保障した。

 また、米国は同盟国の国内で貧困による共産主義の蔓延を防ぐために、同盟国を工業化し、その製品を米国市場に大量に輸出させることで経済成長させた。東西冷戦終結後は、旧共産圏など世界中の新興国も米国市場への輸出で豊かになり、特に中国の劇的な経済成長をもたらした。

 米国が築いた国際社会の中で、最も恩恵を受けたのが日本だったのはいうまでもない。日本は、自由主義圏と共産圏によって南北に分断された朝鮮半島に近接し、アジアにおいて共産主義ブロックと対峙する前線だった。米国は、日本を「高度経済成長」させることで、共産主義に対抗するフロントラインとして機能させようとした。

 そもそも、日本が第二次世界大戦を始めた最大の理由は、資源と市場へのアクセスを確保するためだった。日本は米国に完膚なきまでに叩きのめされたが、戦後はその米国から、元々の望みをはるかに上回るものを提供された。その上、米国から自力では到達しえない完璧な安全保障を提供された。これは「奇跡」だったのである(第170回・P.3)。