人手不足でもなかなか賃上げ加速につながらないことを取っても、日本経済は決して盤石ではない。ある市場関係者は、名目GDPの停滞に伴い、遅行指標のように動く「雇用者報酬」がこの先は伸びづらい可能性を指摘する。さらに、為替市場ではこの1ヵ月で急速な円高・ドル安が進み、年明けには一時1ドル=104円台まで急騰。足元では108円ほどまで戻しているが、自動車はじめ主力の輸出企業への逆風となっており、増益を続けた企業収益に19年度は黄信号が灯っている。

 一方で振り返れば前回の増税の先送り表明前の16年2月に発表された15年10~12月期のGDPもマイナス成長(同)となり、市場予想を上回る減速ぶりを示していた。しかも同期間の速報値発表時は18年と同様、15年の4半期ベースで見た成長率では、4~6月期に続く二度目のマイナスとなっていたのだ。

 もう一つは、16年の「チャイナショック(中国ショック)」の再来が現実化しつつあることだ。同年初頭は中国国家統計局が発表した12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)の悪化を引き金として投資家心理が悪化し、年明け直後から世界同時株安の様相を呈する事態を招き、リスクオフ(リスク資産の敬遠)の雰囲気が広がる中で外国為替市場でも急速な円高・ドル安が進んだ。

 今年はどうか。日本市場の大発会が大幅安となった主因は米アップルの売上高見通しの下方修正だったが、その理由こそは中国経済の減速に他ならない。米中貿易戦争の影響も重荷となって中国経済は内外需とも勢いを欠いており、直近でも1月2日に財新・マークイットが発表した18年12月の中国PMIは、19ヵ月ぶりに景気判断の分かれ目となる50を下回った。経済状況の厳しさを物語るように中国株は下落局面が続き、上海総合指数は16年のチャイナショック時の安値を下回る状況にある。

 3つ目は、参議院議員選挙(参院選)を控えるタイミングであることだ。16年は6月の増税延期表明を経て、7月の参院選では自民、公明の与党が改選定数の過半数を確保し大勝。安倍首相の悲願とする改憲に向けて、改憲派勢力は憲法改正発議に必要な3分の2の議席数を得るに至った。

 今年に目を向けると、7月に安倍首相の自民党総裁任期である21年9月までで最後の参院選を迎える。現職中に憲法改正を発議したいなら、残された時間は多くない。19年は4月に統一地方選も控える中、是が非でも改憲を実現したい安倍首相にとって、増税延期を追い風とした16年の“成功体験”はまだ記憶に新しいかもしれない。