元劇団四季俳優が指南、人の心を震わせる「双方向型プレゼン」の極意プレゼンは「演劇」に例えて考えると、うまくいく?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

ざわついた場が静まるほどの
「プレゼン力」は夢じゃない

 読者のみなさん、こんにちは。ビーユアセルフ代表の岩下宏一です。

 私はかつて、ミュージカル俳優でした。

 自分のキャリアの大きな軸は「人事」と「演劇」です。そう言うと、「人事と演劇の間にどんな関係があるのか」と不思議に思う人もいるかもしれません。私は、ミュージカル俳優だけでなく、これまでの人生で、人事に関する仕事にも数多く携わって来ました。ゆえに、この2つが私のキャリアの軸となっているのです。

 大学卒業後、NTTに入社し、主に人事に携わりました。そして29歳のときに、劇団四季のオーディションを受けて合格し、『ライオンキング』ほか3作品、500ステージに出演します。その後、人事コンサルティング・アウトソーシング企業でのコンサルタント職、人事総務部長職を経て、現在は独立してプレゼンやファシリテーションの支援を主業務とした事務所、ビーユアセルフの代表を務めています。

 とりわけ劇団四季での経験は、さまざまな学びと恩恵をもたらしてくれました。なかでも、自分が最も劇的に変化したものがあります。それは「言葉の伝わる力」です。

 劇団四季退団後、再び企業勤めを始めた私は、キャッチアップのためにさまざまな講座や勉強会に出ていました。私がグループ討議の結果を発表する場面などになると、それまでざわついていた空気がぴたりと静まり、参加者がみな、私を見つめて一心に聞き入るのです。

 これは明らかに、芝居の稽古や本番を通じて培ったノウハウが奏功している――。そう感じました。違いはそれしかないからです。その経験から、「学びを整理して他者に伝えたい」「伝わり、わかり合える楽しさや心地よさを味わってほしい」と考えるようになり、事務所を立ち上げることにしました。

「ミュージカル俳優がプレゼンを教えます」と言うと、どうしても派手なステージングや発声・発音を期待されます。最初は私も、そういったことにこだわっていました。しかし、さまざまな学びの場を持ち、クライアントの個別ニーズに応えていくうちに、本当に大事なのはそれらではなく、むしろより本質的な部分において、エンタテインメントを通じて学んだことがいろいろと役に立つ、ということがわかってきました。

 ポイントを紹介し、解説しましょう。