1位はサンデルの師による
世の中を変えた20世紀の名著

 1位はジョン・ロールズ『正義論』。哲学者のロールズによって書かれた20世紀の名著です。1971年に日本語版が刊行されましたが、長く品切れの状態が続いていました。

 そして2010年、待望の改訂版が刊行されました。訳者は東大の名誉教授で、日本におけるロールズ研究の第一人者である川本隆史先生と、福間聡先生、神島裕子先生の3人です。

 2010年といえば、前回東大で過去一番売れた本としてご紹介したサンデル先生の『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)が大ベストセラーとなった年です。サンデル先生は自身の師であるロールズの考え方にかなり影響を受けており、著作でもたびたび『正議論』について言及しています。

 その影響もあってか、『正義論』は、844ページの分厚い本であるにもかかわらず、多くの東大生に読まれています。

 ロールズはまず、ロック、ルソー、カントに代表される伝統的な理論の一般化・抽象化を試みます。そのうえで、当時の政治思想の中心であった「最大多数の最大幸福」を掲げる功利主義に代わるものとして、「公正としての正義」を構想しました。

 公正としての正義とは、身体の自由や言論の自由など基本的な自由を全員に平等に分配すること、もっとも不利な状況にある人々の利益を改善することという二つの原理から成り立っています。功利主義は、大多数の利益のために少数の人が不利益を受ける可能性がありますが、ロールズは『正議論』によってその問題を乗り越えようとしているのです。

 この本は、「社会の正義」と「個人の幸福」を両立させる方法について論じた、まさに「正義論」というタイトルにふさわしい一冊になっています。