兵士がお腹がいたくなったら
内なる危機とどう向き合っていたのか
戦場は危機に満ちている。いつ敵の襲撃があるかわからない。やるかやられるか。だが、危機は敵だけではない。過酷な環境下、自らの体調を崩すこともある。大病に至らないまでも張り詰めた空気の中、兵士だって行軍中に戦闘中にお腹がいたくなることもある。一体、彼らはどのように内なる危機と向き合っていたのだろうか。
明治以降の日本の公衆衛生を丹念に調べた本書『陸軍と厠 知られざる軍隊の衛生史』は、誰もがふと気になるが「まあ、いいか」とすぐに忘れてしまう疑問に正面から向き合った寄書と言えるだろう。タイトルと装丁からは想像が及ばないほど真面目に考察している。
例えば、野戦中の用便を見てみよう。