発想の転換

 ラスベガスのホテル業界では、ハイテク大手や会議主催者といった顧客が、温室ガス排出や食品廃棄などの環境阻害要因を抑えた会場を使いたがるケースが増えている。米カジノ運営大手MGMリゾーツ・インターナショナルの最高サステナビリティ責任者、シンディー・オルテガ氏はこう話す。

 MGMリゾーツの幹部は何年もかけ、妥当な予算のソーラー事業を探し、昨年ついに見つけたとオルテガ氏は言う。再生可能エネルギー会社インベナジーの提示額はあまりに低く、オルテガ氏は最初、相手が間違えたと思ったという。

 インベナジーは、地域内にあるMGMのカジノ13カ所のほぼ全部をまかなえる電力量を1メガワット時(MWh)あたり30ドル未満で提供する。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、これが実現すれば、新たな電力供給としては世界有数の安値水準となり、先進国で化石燃料発電所が新たに稼働する際の50~170ドルを大幅に下回る。

 「環境に配慮することでビジネスもうまくいく」とオルテガ氏は話す。「発想の転換だ」

 イエール大学が先週公表した調査結果では、地球温暖化が進んでいると考える米国人の割合は年末時点で73%に達し、調査開始後の10年間で最高となった。

 さらに税法上の理由でも切迫感が増している。

 米国が2015年に原油輸出を解禁した際、これと引き換えに米議会は(再生可能エネルギーの支援策として)風力・太陽光発電への優遇税制を延長した。その措置は段階的に縮小されることになっている。風力発電に対する税控除はすでに縮小されており、制度そのものも2023年までに終了する。

 このため、すぐにも事業契約を締結し、資金の手当てをして発電所を完成させなければ、優遇税制を最大限に生かすことができない。

 「(買い手企業は)この時流に今すぐ乗ろうとしている」と、インベナジーの創業者であるマイケル・ポルスキー最高経営責任者(CEO)は話す。「最大の税控除を受けるために、われわれはもう待ったなしというところに追い詰められている」

 ポルスキー氏をはじめ多くの業界関係者はこの措置が更新されることはないとみている。ただ、業界としては順調に成長しており、たとえ税控除がなくなっても、技術の進歩で一段とコストが下がり、業績は上向くだろうと話す。

 風力・太陽光発電やエネルギー効率化事業などに投資するハノン・アームストロング・サステナブル・インフラストラクチャー・キャピタルの幹部は最近、カリフォルニア州に1週間滞在し、投資先の企業を訪ねて回った。優遇税制の終了にどう備えるかを考えることが目的の1つだったとジェフリー・エッケルCEOは話す。

 発電事業者は技術面からエネルギー効率の改善を目指し、風力タービンの羽根の大型化やソフトウエアの改良などに取り組んでいる。一方、企業と発電事業者との契約交渉を支援する仲介業者が急増しているとの指摘もある。

 「当社はこの取り組みがもっと進むと期待している」。米ギャップ傘下の女性向けスポーツウェアブランド「Athleta(アスリータ)」のクリス・サムウェイ最高財務責任者(CFO)はこう述べた。同社は今月、カリフォルニア州北部に新設される太陽光発電所から電力供給を受ける契約を結んだと発表した。「われわれは既成概念の枠を超えるグループの一員になりたいと考える。自分たちの業界、そして全ての企業のために」

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