こりゃ日本も危ないわ…成長が速すぎてエヌビディアを震えあがらせる「半導体企業」とはPhoto:Andrew Harnik/gettyimages

半導体や製造装置などの技術分野で、中国企業の実力には懐疑的な声が多かった。しかし、世界で最もこの分野に詳しいであろう米エヌビディアのトップは最近、焦燥感や危機感をあらわにした発言を繰り返している。トランプ氏の対中強硬策が、中国AI企業の競争力を高める皮肉な状況を生み出しているとしたら…。米国の優位性がなくなれば、同盟国であるわが国が得意とする製造・検査装置ビジネスにも多大な影響を被ることになる。決して対岸の火事ではいられない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

米中対立の皮肉、日本も巻き添え...

 4月末、米エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、「AI(人工知能)チップ分野において中国は、米国に遅れているわけではない。むしろ中国は、すぐ後ろに肉薄している」と発言した。この指摘は、米国が圧倒的に優位と思われたAIの分野で、中国の追い上げが予想を超えてきていると解釈できる。

 フアン氏の焦りを感じる発言の意図は、トランプ大統領は有力大学や研究者に圧力をかけている場合ではない、そんなことをすれば急追する中国に追いつかれてしまう、といった警鐘だと考えられる。

 これまで米国は最先端のAI関連、半導体の分野で、中国に対して強い優位性を維持していると考えてきた。ところが最近の情勢を見ると、中国企業の躍進は目覚ましく、それほど大きな差はなくなったとの指摘が目に付く。特に、華為技術(ファーウェイ)は急速に実力を高めていて、新型AIチップの「Ascend910D」を投入したことは、フアン氏にとってショックだっただろう。

 一方、トランプ政権はそうした状況を十分に理解していそうもない。依然として高関税政策に固執し、意向に沿わない大学などには支援金の縮小などの圧力をかけている。一部の研究者はそうした環境を嫌って、米国から離れたケースもあるようだ。こうした状況が続くと、米国は深刻な状況に追い込まれ、同盟国であるわが国も巻き添えになることが懸念される。