厚生労働省の統計担当職員、なかんずく旧労働省系部局の職員について、誇りと責任を持って職務に当たることができるよう、専門職員の育成や採用、人事考課についての柔軟性(数学職だから~ではなく)等が必要なのではないか。

 むろん、このことは責任者、関係者等を処分しないことを意味しない。詳細な省内の調査によって責任の所在と範囲を明らかにし、少なくとも、国家公務員法に基づく処分は厳正に行われるべきである。現段階で行われている処分は、残念ながら、その場しのぎの、「臭いものに蓋」をするレべルのものでしかないだろう。

統計法を所管する
総務省は何もしなかったのか?

 もっとも、そうしたことがあったとしても、なぜ統計法を所管し、政府の統計を管理・監督する立場にある総務省は何もしなかったのか、という疑問が残る。しかし、これは「しなかった」のではなく、正確には「できなかった」のである。

 統計法においては、統計の作成機関に対する総務大臣の権限として指定統計調査に係る措置要求、一般統計調査に係る改善の要求、資料提出及び説明の要求等が、統計委員会の権限として資料の提出等の要求が規定されているが、いずれも「求めることができる」という、いわゆる「できる規定」であり、相手方が拒むことができない立ち入り調査等の、それ以上の権限は規定されていない。

 従って、今回の不正においては、毎月勤労統計調査の実施状況について資料の提出等の協力を求めることはできるが、たとい疑義が生じたとしても厚生労働省の統計担当部門に立ち入って関係資料を調査して虚偽を暴いたり、不正を発見したりすることができないので、厚生労働省側が虚偽の資料の提出や説明を続けている限り、それを信じざるを得ないということになってしまう。

 また、今回の不正は統計法違反であるとして罰則の適用が検討されているようであり、これに該当するのは「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者」、つまり基幹統計の作成機関の職員が虚偽の統計等を作成した場合に、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」とする第60条第2号であると考えられるが、今回の不正に当てはめて「基幹統計の作成に従事する者」の範囲をどう考えるのか、分かりやすくするための虚偽の統計等を作成した場合と書いたが「真実に反するものたらしめる行為」として具体的にどの行為をとらえるのか等極めて曖昧であり、そうなるとこの罰則は「伝家の宝刀」であっても、その適用は「絵に描いた餅」に終わってしまう可能性も高いのではないかと考えられる。

 しかも、今回の不正に適用できる罰則規定はこれしかなく、これでは抑止力にも何にもなりはしないだろう。

統計調査の審査の手法についても
研究・開発等を進めるべき

 やはり統計法に基づく総務大臣及び統計委員会の権限を「できる規定」で協力を求める程度ではなく、資料の提出命令等や立ち入り調査の権限を設ける等、相手方が拒むことができず、拒んだ場合は罰則が適用される程度まで引き上げるべきであろう。

 加えて、昨今の官庁統計を巡る不祥事にかんがみて、統計法の適用対象となる統計調査の範囲を広げるか、安易に統計法の対象外と整理されてしまうことがないよう、統計法の厳格な適用が可能となる規定も設けるべきであろう。