勤労統計不正問題でフタをされてはならない「霞が関の病理」という本質論
厚労省の毎月勤労統計の不正問題が拡大している。これは霞が関の深部に横たわる病理に関係しており、問題の本質を見極める必要がある Photo:PIXTA

昨年末に明るみに出た厚生労働省の毎月勤労統計の不正を巡って、2019年度政府予算の閣議決定のやり直し、厚労省に設置された特別監査委員会の調査のやり直しなど、問題が拡大している。安倍政権としては4月の統一地方選挙や夏の参議院選挙を控え、この問題に一刻も早くフタをして拡散を止めたいところだろう。しかし、これは単なる統計という技術的な問題ではなく、霞が関の深部に横たわる病理に関係している。何が問題の本質なのかを考えてみよう。(明治大学公共政策大学院教授 田中秀明)

統計の信頼性が根底から崩れた
厚労省で何が起きていたのか

 この問題は、昨年末に総務省の統計委員会(統計法に基づき設置された第三者機関)が、厚労省に対して調査結果が不自然だと指摘したことから、不正が世の中に明るみになった。役所は「不適切」と言っているが、法令違反なので「不正」である。

「毎月勤労統計」とは、賃金や労働時間の動向を調査する統計である。同統計では、従業員5~499人の授業者は抽出で、500人以上の大規模事業者は全数を調査することになっていたが、2004年以降、東京都内の大規模事業所については、3分の1程度を抽出して調べていた。

 全数調査は民間企業や地方自治体などの負担が大きく面倒だからというのが、不正の主な理由だ。そうであれば、調査手法の在り方を議論して正々堂々と見直すべきだが、それをせずに勝手に調査手法を変えたのが問題の1つである。

 さらに問題なのは、3分の1の抽出ならば、全体の数字を算出するために3倍して補正すべきところをしなかったことである。また、2018年からこっそりと補正をして、統計数字を発表したことである。

 相対的に賃金の高い大規模事業所が3分の2も抜けていたため、補正しなかったときは賃金が過少評価され、補正後は数字が正しくても、その前と比べると過大評価されることになり、統計の信頼性が全く失われてしまった。

 問題の大きさに鑑み、厚労省は1月16日、民間有識者で構成される特別監察委員会(座長/樋口美雄・労働政策研究・研修機構理事長)を設置し、事実関係及び責任の所在の解明を依頼した。同委員会は、わずか1週間たらず後の22日に調査結果を発表した。