友人に勧められて、昨年9月に出版された「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)を遅ればせながら読んでみた。
ジェンダー問題に詳しい北原みのり氏が、女性向け情報誌「an・an」(マガジンハウス)を創刊から読み返し、その時代ごとのセックス観から女性の生き方を考察しているのだが、読み終えて、「今の若い女の子の考えは、これほどまでに社会に抑圧されているのか」と少々ビックリしてしまった。
90年代半ばまでは「女だって自分の足で立って、もっと自由になろうよ!」と叫んでいた「an・an」が、2000年代以降になると女性同士で勝ち負けを競わせ、社会や男性にこびて、彼らに「選ばれることが女の幸せ」であるという論調に変わってきたというのである。
自立して働く女性が増える一方で、長引く景気の悪化によって「夫に養われる」という生き方を再び選ぶ人が増えているという。近頃、若い女性の間で専業主婦願望回帰が見られるという話も聞くが、そうした生き方を後押しする仕組みとして存在しているのが社会保険の被扶養者制度だ。
年収130万円の壁によって
働き方を左右される女性たち
「国民皆保険・皆年金」の日本では、誰もが何らかの医療保険と年金に加入する。これらの制度のおかげで、医療保険からは病気やケガの保障が、また年金からは老齢、障害、遺族の3つの給付が受けられるわけだが、同時に加入者には所得に応じた保険料を納付することも義務づけられている。
ただし、会社員や公務員の夫の収入で生活している妻は、保険料の負担なしで健康保険や国民年金に加入できることになっている。これが社会保険の被扶養者で、原則的に妻本人の年収が130万円未満であることなどが条件だ。
パートタイムなどで働いて、この年収130万円の壁を超えると、妻は夫の扶養から外れて、自分で健康保険と年金の保険料を支払うことになる。