「社会保障・税の一体改革」では、非正規雇用の社会保険の未加入問題を解決すると同時に、健康保険の支え手を増やすために、会社員や公務員に扶養されるパート主婦の加入を拡大することを打ち出している。具体的には、従業員501人以上の大企業で働くパート主婦の被扶養者条件を、2016年度にこれまでの年収130万円未満から94万円未満に引き下げようというものだ。

 この案によって、国は約20万人のパート主婦が被扶養者を外れて、保険料を自己負担するようになると試算している。しかし、果たして思惑通りにいくだろうか。人件費を抑えたい企業は、今度はパート主婦の収入を94万円未満に調整して、社会保険の負担から逃げ切るのではないだろうか。

 女性の働く意識に目を向けても、自分の足で立って働くよりも、「夫に養われたい」と考える女性が再び増えている今、彼女たちは会社側に言われた通りに働き方を調整することも考えられる。その結果、「主婦のパート収入は94万円未満がおトク」という新しい壁に塗り替えられるのではないか。

 北原氏は「アンアンのセックスできれいになれた?」のあとがきに、こんな言葉を残している。

 〈あなたが自由であるように、私も自由な存在である、と信じ切る懐の深さが自由なのだと思う。アンアンが70年代に訴えたように、「これからの女の人は自由です」と、優しく肩を抱くような力が自由なのだ。〉

 専業主婦だろうが、パート主婦だろうが、会社員で働こうが、自営で独立しようが、どんな働き方も生き方も、その人の自由だ。けれど、今のように、女性同士が「あちら側」と「こちら側」に分断された不平等な社会保険制度のもとでは、素直に互いの自由を認め合うのは難しい。わだかまりなく「優しく肩を抱く」ためには、まずは制度の不公平感を解消する必要がある。

 少子高齢化で社会保障の支え手不足が深刻化する中で、本当に必要なのは「会社員の妻だから」とか「自営業の妻だから」などで差別されない公平な制度への見直しだ。不公平感が解消されないまま、財源論だけで小手先の改革を行っても、制度への不信感を増すだけではないだろうか。