コメダ珈琲店が「名古屋の食文化」にこだわり全国制覇できた理由コメダ珈琲店がこの度全国への出店を果たすという。同じ名古屋出身の企業が全国展開に苦戦するなか、同社はなぜ商圏を急拡大させているのか Photo:DOL

コメダ珈琲店が全国制覇を達成
「名古屋のモーニング」は全国区に

 名古屋では知らない人がいない喫茶店「珈琲所 コメダ珈琲店」(以下、コメダ)などを運営するコメダホールディングスが、2019年6月に最後の空白地だった青森県に出店することがわかり、これで全国47都道府県制覇を達成することになりました。

 コメダは最近では東京都内でも50店舗を超えたので、「見たことある」「たまに行く」という読者の方も多いかもしれません。名古屋のローカル喫茶店だったコメダはいつのまにか812店舗に拡大し、全国制覇(?)を達成するまでの存在になりました。

 実は、このコメダの全国制覇については、他のチェーンビジネスとはまったく違う、あるメカニズムが働いています。特定のビジネスパーソン読者の方にとっては、自分の未来を変えるヒントにつながるかもしれません。“知られざる”(?)コメダの全国制覇の謎を詳らかにしてみたいと思います。

 コメダの店舗展開は圧倒的に名古屋に集中していて、愛知県だけで店舗数は240店舗を超えています。岐阜、三重、静岡といった隣県では各県30店舗程度ですから、極めて名古屋に集中した商圏を持つコーヒーチェーンであることがわかります。

 コメダの特徴は、まずモーニング。コーヒーメニューのいずれかを注文すると、厚切りのトーストとゆで卵が無料で付いてきます。名古屋圏の独身者はコーヒー1杯で無料の朝食を食べられるこのモーニングというメニューが当たり前だと思って成人するのですが、東京や大阪などの大都市に引っ越してきて初めて、それが名古屋以外では当たり前ではないことに気づきます。これが「名古屋人あるある」なのですが、とにかくこの無料のモーニングがコメダの1つ目の特徴です。

 2つ目の特徴は甘いもの。これは名古屋の食文化でもあります。コメダではシロノワールという、ふんわり焼いたデニッシュパンの上にソフトクリームとシロップをかけた独特のデザートが人気です。他にも、このソフトクリームをベースにしたデザートやドリンクがたくさん揃っているのがコメダのメニューの特徴ですが、これは名古屋の食文化なのです。

 名古屋にはコメダとは別の「寿がきや」(スガキコシステムズ)という、ローカルでは非常に有名なラーメンチェーンがあります。実はここのメニューも同じで、ソフトクリームをベースにした甘いメニューがたくさん。そしてラーメンチェーンなのに、午後になると女子高生が集まってきて、デザートメニューを注文して何時間もぺちゃくちゃと会話を楽しむ。それが名古屋では当たり前なのです。