最短約18分で法人登記が可能――。
徹底して効率化されたプロセスによって、そんな驚くべきサービスを実現した「国」があります。その国こそ、人口約130万の小国ながら、行政手続きの99%を自動化するなど「電子政府」としての基盤を確立したエストニアです。同国が世界で初めてローンチした電子国民プログラム「e-Residency(イーレジデンシー)」では、エストニア国民でなくても、e-Residencyカードを取得することで同国の電子政府システムの一部を利用することが可能となり、電子署名や法人登記を行うことが可能となります。
そんなエストニアの現地を徹底取材し、孫泰蔵さんの監修で刊行された『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』。今回、同著に登場する起業家たち3人に、改めてインタビューすることができました。
2人目となる今回は、e-Residencyと連携した法人登記・会計プラットフォームを提供しているLeapINの共同創業者エリック・メル氏を直撃。フリーランサーの数が年々増加する中で、今必要なサービスとは何なのか。彼らが描く「つまらなくない未来の働き方」に迫ります(文:齋藤 アレックス 剛太)。
LeapIN共同創業者。コンサルティング企業や通信会社にて、一貫してIT系の業務に参画しつづけた後、2015年にLeapINを創業。エストニアが誇る電子国民プログラム e-Residencyと連携した法人登記プラットフォームを手がけており、これまでに同社を通じて約2,000社が誕生している。(撮影:小島健志)
最短18分
電子国民の起業を支援する「イーレジデンシー」
――まずは自己紹介をお願いします。
LeapIN共同創業者のエリックと申します。LeapINは、e-Residencyと連携したビジネスプラットフォームを開発・提供しています。私たちが目指しているのは、負担が大きい法人登記や会計処理などの業務を効率化することで、フリーランサーたちが働きやすい世の中をつくることです。
――e-Residencyに代表されるように、エストニア政府は世界の中でもかなり先進的な施策に取り組んでいる姿が目立ちます。エリックさん自身はエストニアという国をどう捉えていますか?
エストニアは「エコシステムの電子化」を達成した、世界でも数少ない国です。それが実現できた背景としては、国としての「俊敏さ」が挙げられるでしょう。我々は人口約130万人の小国ですが、その小ささを活かし、短期間で実行・実装を続けたことによってさまざまな恩恵を受けてきました。試行錯誤を繰り返したことで、世界トップレベルの電子政府のシステムを開発することができ、そのことで政府機関と民間企業がより効率的にデータを共有することができるようになりましたし、人々の生活もより便利になったのです。
こうして築かれた電子国家のエコシステムこそが、いま世界中から注目を集めるモデルケースとなっているのです。幸運にも、世界的な電子化のトレンドの最先端にいる国、それがエストニアだと言えるでしょう。