「エストニアは、ダントツに未来の社会を先取りしている」
すべては、孫泰蔵さんのこのひと言から始まりました。
人口約130万人と小国で、高齢化や都市化など、日本と同じような課題を抱えながら、ブロックチェーン技術を活用してほぼ100%「電子政府」を実現し、ユニコーンと呼ばれる評価額10億ドル以上のベンチャーを次々と排出するエストニア。ネガティブな「つまらない」未来予測があふれ、閉塞感で充満した日本と、ワクワクする未来、つまり「つまらなくない未来」を実現するために邁進するエストニアとの違いは、どこにあるのでしょうか?
エストニアが日本で暮らす個々人に対してインパクトを持っているというその本当の理由について、『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』序章より、孫泰蔵さんのインタビューの一部と、そして孫さんも衝撃を受けた「ワクワクする未来」を生きる人たちの“声”をお届けしましょう。
未来社会の道しるべ
エストニアの現地で気づいたこと
Mistletoeファウンダー
1972年、福岡県生まれ。連続起業家(シリアルアントレプレナー)。世界の大きな課題を解決するスタートアップを育てるため、投資や人材育成、コミュニティー創造などを行うMistletoe(ミスルトウ)を創業。Collective Impact Community(コレクティブ・インパクト・コミュニティー)という新業態を掲げている。ソフトバンクグループ社長の孫正義氏は実兄。監修した書籍に、『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』がある。
僕にとって最も刺激的な国の1つ、エストニアを訪れています。
エストニアは、欧州バルト三国の1つで、人口わずか約130万人の国です。首都タリンの旧市街地は、世界遺産に登録されており、ロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」に出てきそうな、中世の趣を残した街並みが広がっています。
そんな小国のエストニアがなぜ刺激的なのかというと、この国から「未来の社会」を感じ取ることができるからです。エストニアの人々はいま、世界に先駆けて、新しい価値観とライフスタイルを掲げ、そのビジョンを最新技術とデザインによって、社会に「実装」しはじめています。
その社会とはどのようなものか。一言でいえば、「ヒューマン・オートノミー(Human Autonomy)」という言葉で言い表せるでしょう。
オートノミーには「(行動や意思の)自由」といった広い意味合いがあります。そのため、この言葉には「人は好きなときに、好きなところで生活し、働き、学び、友に出会い、子を育て、人生を楽しむことができる」という意味が込められています。エストニアは、人々が自由に生きられるという社会をつくり上げようとしているのです。
一方、日本の社会は縮小し、至るところで「パイの奪い合い(編集部注:限られたプレイヤーで限られた市場を奪い合う状況)」が起きています。そのためか、最近、同調圧力の強さが増しているように感じます。
会社で何か新しいことをしようとしても、上司から「勝手なことをするな」と押さえつけられてはいませんか。会社で働く必要はない仕事なのに「ここにいろ」とオフィスのイスに縛りつけられてはいないでしょうか。