親ならば、子どもには賢く育ってほしいもの。しかし賢い子とは、どんな子どもだろうか。IQや偏差値が高い子や、受験勉強が得意な子ばかりが賢い子ではない。
もし、自分の損得だけに使う「知恵」を賢さだとカン違いして、それを自慢に思う子どもがいたとしたら、近い将来、彼(彼女)は社会からのけ者にされていくだろう。それが集団心理の基礎だから……。
弱い人の味方になれる子、自分の意見を持てる子、それをきちんと表現できる子、他人を心から応援できる子、そして素直な夢を描ける子……そんな前向きな心で人生にトライできる子どもに育ってほしいという願いを込め、心理学者・植木理恵さんはダイヤモンド社から『賢い子になる子育ての心理学』を上梓した。
心理学が積み上げてきた膨大なエビデンスをベースに、知っておきたい子育ての「正解」を解説していく。

食事のマナーに
うるさすぎるのはマイナス

植木理恵(うえき・りえ)
1975年生まれ。心理学者、臨床心理士。お茶の水女子大学生活科学部卒業。東京大学大学院教育心理学コース修了後、文部科学省特別研究員として心理学の実証的研究を行う。日本教育心理学会から城戸奨励賞、優秀論文賞を史上最年少で受賞。現在、都内総合病院でカウンセリングを行い、慶應義塾大学では講師を務める。また、気鋭の心理学者としてフジテレビ系「ホンマでっか!?TV」でレギュラーを務め、幅広い層から支持を集めている。

子どもへのしつけはどのようにすればいいのか? という質問をよくされます。お箸の持ち方はこうしなさい、テレビを観ながらご飯を食べてはいけない、挨拶はちゃんとしなさい。こういう生活のマナーを伝えるのは、たしかに親の役割ですね。しかし、こと食事のときにあまり口うるさくするのは、心理的にマイナスが大きいことがわかっています。

なぜなら、子どもの成長には、食事による「栄養摂取」とともに「リラックス摂取」というものが欠かせないからです。伸びやかな心が育つにはリラックスして一人で自由になんでもできる時間がとても大切なのです。

ですから、食事のときに「お茶碗の音を立てないで」「猫背になって食べない」といったことを毎度のようにうるさくいわれたりすると、当然ながらリラックスして食べられなくなります。すると、同じ食事を摂っても消化機能が落ちるため、栄養摂取効果が下がってしまうのです。

こんな実験があります。食事のときに親子で今日の出来事を話さなくてはいけないグループと、何も話さなくてもいいグループをつくり、どちらの子どもがリラックスして食事に集中できるかを確かめたもの。結果、親子でおしゃべりしながら食事をする前者より、後者のほうがずっと子どもは安心して食事をしていることがわかりました。

黙っていてもいいという自由度があるため、子どものリラックス摂取度が高かったのです。子どもだけでなく、大人もたまには一人でご飯を食べることを欲していたりしますよね。もちろんおしゃべりをしながら食事するのは幸福なことですが、必ずいつも誰かと話をしながら食事をしなければならないとなると、あんがい疲れるものです。疲れているときなんかは、一人で静かに食事するほうがリラックスできることもあります。

かつて「ランチメイト症候群」という言葉が流行ったように、一人でご飯を食べる姿は寂しいとかみじめとかといったイメージを持つ方もいます。でも、個食は本来心からのリラックスをもたらしてくれる効果が高いのです。

栄養摂取が重要な子ども時代は、なおさら食事の時間が大切ですね。食事中は少々お行儀が悪くても、できるだけ楽しく穏やかに過ごさせてあげるべきです。マナーやお行儀は、食事の時間以外のときにしっかり教えてあげて、食事が始まったらもうそういう話は切り上げるべきでしょう。

参考記事
子どもを褒めるときに使いたいテクニック