ダメ出しを重ねると
子どもは萎縮する

また、しつけや注意を必要以上に口うるさくすると、子どもにいわゆる「ダメ出し」を何度も繰り返し行っているのと同じことになります。何度もいったことができなかったりすると、その言葉もだんだん厳しいものになってしまいますね。

けれども「できない」ことがあるたびに、親が「できないね」というのはダメ出しを重ねているようなものです。いってみれば「また0点をとってしまった」と子どもがクヨクヨしている上に、さらに親がしつこく「0点だね」と言葉をかぶせる必要はないのです。

親から「あなたはできない」というメッセージを日常的に受け取っていると、子どもは当然萎縮していき、親に隠しごとをするのが習慣になることがわかっています。さらに、蓄積されたストレスを友だち関係や学校で発散することで問題行動を起こしてしまう子どもも少なくありません。

あなたは、小さいころに親御さんと話した「内容」について、どのくらい詳しく覚えていますか? こういうアンケートをとってみると、何を話したかということは、意外とたくさんは思い出せないものです。ところが、お母さんがどんな食事をつくってくれたかということになると、今度は鮮明に思い出せます。それだけ食事時間の記憶は強いのです。

大人になってからそうした記憶がたくさんあることは、見えないところでの支えになってくれます。そんな大切な食事の思い出に、しつけによるダメ出しの記憶ばかりが混じったりするようなら、それはつらいことです。

社会性を育む過程で、他人に迷惑をかけたり、不快な思いをさせたりしないためにも、さまざまなルールやマナーを教えるしつけはもちろん必要です。ゲームを長時間させないとか、勉強する習慣をつけさせるとか、子どもが成長していく上で欠かせない大事なしつけもあります。

ですが、それが食事や睡眠といったリラックスするべき時間にまで及んでしまうと、お子さんの心の成長にとって大きなマイナスになってしまいます。ですから、たとえばマナーなどについて注意や指導をし終わったら、「わかったね。じゃあご飯にしようか」「よし、おやすみ前の絵本を読もうか」と、笑顔に切りかえてあげることが重要です。

のべつ幕なしにダラダラと小言を続けられると、子どもの心もダラダラと覇気のないものになります。厳しさと甘さのメリハリのなかでこそ、子どもの心にも礼儀や社会性といったメリハリが育っていくのです。