若年層を取り込む新戦略で
69歳の中瀬氏が担う役割は?

岩田社長決算発表記者会見の岩田功社長
Photo by Satoru Okada

 そもそも中瀬氏は、1993年に社長、2000年に会長となったが、13年に希望退職者の募集を実施し「雇用を守れなかった経営責任を示す」として引責辞任した人物。代表権はないにせよ再び会長とする人事について、岩田社長は経営の監督と執行の分離という狙いを挙げた上で、「ご批判、ご意見はあろうが、われわれは緊急時だと認識している。危機を打開するために、使える力は全部使っていく」と説明した。

 18年にも247人が希望退職に応募するなど確かに緊急時だが、中瀬氏の復帰がどれほど事業に影響するのか。アパレル業界に詳しいある関係者は「公認会計士である中瀬氏は経理などには明るいが、これから何か前向きなことができるという感じはしない」と言い切る。

 むしろ17年に退任した杉浦昌彦前社長の方が、同社が主な売り場とする百貨店に顔が利いていたといい「バーバリーなき後の三陽商会でもなんとか百貨店に売り場を確保できたのは、杉浦氏の功績」(前述の関係者)との見方がある。

 とはいえ杉浦氏については、東京・南青山に三陽商会が保有していたビルを、有罪判決を受けた人物に売却しようとしていた問題が同社の特別調査委員会によって17年に明らかになっている。これを奇貨として実質的に杉浦氏を追い出したとされる岩田社長も、今さら杉浦氏に頼るわけにはいかない。

 そんな三陽商会の現経営陣は、昨年の早期退職による人件費の削減効果や、広告宣伝の強化による売上高の増加によって、今期は営業利益の黒字化を実現すると宣言した。

 EC(電子商取引)でも、若い顧客を呼び込むために自社サイト以外のECプラットフォームでの販売を強化するとしており、話題のZOZOTOWNについては「撤退云々は、今は考えていない」(岩田社長)とのことだ。

 社内でも、各ブランドを束ねる第1~第5の各事業本部の現場リーダーに若手を抜擢するほか、秋には20代後半~30代前半の女性向けの新ブランドをスタートするとしている。中高年層に強いとされる同社のイメージを一新するというメッセージを、社内外に発信しようとしているようにみえる。

 それだけに、69歳である中瀬氏をわざわざ復帰させるなら、より積極的な説明があってもよかったのではないだろうか。