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Apple iMac 2017

 1984年1月のスーパーボウル中継で、アップルはMacintoshのコマーシャルを放映しました。ちょうどジョージ・オーウェルの小説のタイトルと同じ年ということもあり、これになぞらえたストーリーで、コンピュータの一極支配を打ち壊すような仕立てとなりました。

 Macintoshは初めてとなる本格的なマウスを駆使したコンピューティングを提案しており、その後アップルが指を中心とした操作へ移行するまで、あるいは今日もなお、マウスを使って画面の中のポインタを操作する方法は続いています。マウスはキーボードと並んで、コンピュータを操作する方法として残っていくことになるのでしょう。

 Mac 35周年の歴史は、決して順風満帆なものではありませんでした。スティーブ・ジョブズ氏が1985年にアップルを去ったのは有名な話ですが、世の中に衝撃を与えたMacintoshを発売した翌年の話だというのは意外なタイミングです。

 ジョブズ不在の中、MacintoshはPowerPCプロセッサへの移行や互換機戦略などを試していきました。日本でもパイオニアやアキアがMac互換機を出したことがありました。しかし1997年にジョブズが復帰し、これらの互換機戦略は撤回されています。

●2つのプラットホーム転換

 筆者がMacを使い始めたのは2001年のこと。そのときアップルから登場していたのがiPodです。それまで自作のWindows PCを使っていましたが、真っ白なポリカーボネイトのiBookをiPodとともに手に入れて、コンピュータのプラットホームをスイッチしました。

 魅力的なiPodを使うためにはMacが必要だったというのは事実ですが、今振り返ればもうちょっと後に乗り換えてもよかったと思いました。2001年はそれまで主力だったMac OS 9の開発が終了し、現在のmacOSの系譜である「Mac OS X」に移行したタイミングだったからです。

 移行期は新OS側でのアプリや周辺機器の対応が不十分なこともあるのが常です。そのためもう少し落ち着いてから、と思ったものでした。ただしClassic環境という形で以前のアプリを新OSで動かすことができる仕組みを備えていました。

 もう1つのプラットホーム移行は、今度はハードウェアです。それまでPowerPCを採用してきたMacを、Windows PCと同じIntelチップへと移行させました。アップルが発表したのは2005年。2006年1月にはMacBook Proが登場し、現在ではすべてのMacがIntelチップを搭載しています。

 ここでも、PowerPC向けのアプリをIntelチップ搭載のMacで動作させるための「Rosetta」といわれる仮想化ミドルウェアが搭載されました。さらに加えれば、Intelチップも最初は32ビットでしたが、同じ2006年7月には64ビットのチップが採用されて、ここでもアーキテクチャの変更が起きています。

 このように、Macは35年の歴史の中、ソフトウェア、ハードウェアのアーキテクチャの移行を繰り返してきました。しばしばアップル自身も、Macがそうした移行を最もうまく実現する製品と紹介するほどです。

●次に起きうるプラットホーム移行とは

 アップルは「MacとiPadの融合はない」と強調し続けています。それぞれの製品ラインを混ぜずに維持する戦略を現在の方針としているのです。これはマイクロソフトがWindowsとSurfaceで進めている新しいPC像を否定するものです。

 一方で、アプリ開発者の開発効率性を考え、iPadアプリを簡単にMac向けにリリースできる仕組みを2019年に登場させるとアナウンスしました。現在のmacOS Mojaveは「ホーム」「ニュース」「株価」「ボイスメモ」など一部のアプリをiPadからMacに移植していることも明かされました。今後は一般のアプリ開発者も、iPadとMacのアプリの一体的な開発を実現できるようになります。

 ここで興味深いのは、MacとiPadのアプリで最も異なる点は「Macのマウスを前提とした操作」と「iPadのタッチを前提とした操作」であり「これに付随する差分に配慮すること」としていた点です。

 この点から翻ってみると、このパートの冒頭に述べた「MacとiPadの融合はない」という意味は、製品として融合する性格のものに手を出さないと決めているだけで、技術的になんらかの障害があるとは思えません。

●iPad Proの成功はMac、iPhoneにも

 アップルの2019年第1四半期決算において、ハードウェアで最も成長したカテゴリはウェアラブル・ホーム・アクセサリ部門。売上高は33.3%増でした。しかし、次いで成長を見せたのはiPadで、16.7%増と久々の二ケタ成長を遂げました。言うまでもなく、iPad Proの投入が奏功したわけです。

 2018年モデルのiPad Proは、iPhone XRと同様の液晶ながら縁なしのディスプレイを実現するLiquid Retinaを搭載し、またFace IDに対応するTrue Depthカメラも備えました。これは2017年にiPhone 7からiPhone Xへと飛躍した際と同様のインパクトになったとみています。

 2014年をピークに3年間低迷を続けていたiPadは、教育・企業向けの低価格モデルの投入と、ハイエンドモデルのiPad Proの充実によって再び成長基調に戻すことができました。

 このことは、Macにも、将来のiPhoneにも適用することができる1つの方法論になるのではないか、と思います。

●2019年のiMacに期待

 アップルは昨年10月、Mac mini、MacBook Airの低価格モデルを発表しました。逆に2018年にアップデートされなかったのはiMacシリーズとMac Proのデスクトップ2モデル、そして最もコンパクトなMacBookです。2019年は例年アップデートしているMacBook Proとともに、これらの刷新に注目しています。

 特に筆者が楽しみなのがiMacです。

 iMacは35年前に登場した初代Macintoshと同じ一体型のデスクトップです。しかも、ジョブズがアップルに復帰して手がけ、アップル復活をアピールしたモデルでもあります。

 現在のiMacはアルミボディで、スタンドの上にディスプレイが取りつけられているだけに見えるデザインで、オールインワンのデスクトップコンピュータを実現しています。

 2007年当初は背面にプラスティックを組み合わせていましたが、2009年に背面も含めてすべてのボディがアルミとガラスのみで構成される現在のデザインへと進化し、薄型化などを施しながらその姿は10年保たれてきました。それだけ、現在のiMacのデザインが長らく消費されないものであることを表しています。

 順当に行けば、FaceTime HDカメラをTrue Depthカメラに置き換え、T2チップもしくはその後継を搭載していくことになるはずです。ビデオエンコードだけでなく機械学習処理のハードウェアアクセラレーションを活用できるモデルへの進化が期待されますが、願わくば、新しいデザインのiMacをみてみたい、という気分も捨てきれません。


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筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura