社員全員の希望はかなえられない
できるのは「適材適所の異動」
小宮コンサルタンツ代表
人事異動は会社員人生を左右する一大イベントです。発令前は、希望の部署へ異動したいと願い、発令後は不満に思う人もいるでしょう。しかし会社は、社員全員を希望する部署に異動させることなどできません。できることは、「適材適所の異動」です。
適材とは、その人が持っている「強み」や「得意なもの」のこと。
松下幸之助さんは経営者の心得として、人は長所7割、短所3割で見なさいと言っています。人にはいいところと悪いところが必ずある。だから部下の強みをきちっと見て、強みを生かせるところに異動させなさいということです。これが人事異動の第一原則。営業が得意な社員に、不得意な文書管理をやらせるという異動には、キャリア形成上どうしても必要ということでなければ、意味がありません。
しかし、注意しなければならないのは、「強み」とは好きとか得意というだけでなく、必要とされる能力を持っているということです。極端な話、草野球選手がメジャーリーグに行きたいと願っても実現しません。野球が好きだというだけでは、適材とはいえないのです。
「想定外の人事」が
人生の根幹になることも
一方で、その人のキャリア形成上必要というのであれば、想定外の異動もあり得ます。私は銀行に新卒で入社して11年勤めていましたが、最も意外な人事だったのは米国留学から戻って営業として支店への配属を希望していたところ、実際にはシステム部勤務を命じられたことでした。
当時は日の当たる部署ではなく、想像もしていなかった人事だったのですが、今振り返ると、「経営コンサルタント小宮一慶」の根幹を支えているのは、システム部の経験にあると言うことができます。