「論理に裏打ちされた戦略があってこそ、成功にたどりつける」――これがかつてのビジネスの常識だった。しかし「他者モードの戦略」は、いたるところで機能不全を起こしつつある。その背後で、いま、マーケットに強烈なインパクトを与えているのは、「根拠のない妄想・直感」を見事に手なずけた人たちだ。
そんななか、最新刊『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』を著した佐宗邦威氏は、いま何を考えているのか? P&G、ソニーで活躍し、米国デザインスクールで学んだ最注目の「戦略デザイナー」が語る「感性ベースの思考法」の決定版!!

PDCAが支配する「カイゼンの農地」

いまでこそ、戦略デザインやイノベーション支援などに関わる仕事をしているものの、僕は「クリエイティブ」とは対極の世界で育ってきた人間だ。もともとは極端な「左脳型」だったのだ。

開成高校や東大法学部の同級生を振り返ってみると、一定の前提の下で答えを出したり、物事を解決したりするのが得意なタイプが周囲にも多かったように思う。

僕自身、ルールが決まっているゲームやパズル、決まった正解があるクイズなどは、決して嫌いではない(そんなに得意でもないが……)。

10〜20代だった当時、僕はわりと素朴に「世の中のたいていのことには『正解』がある」と信じていた。また、世の中には実際、そういう「正解」があっただろう。

一見、難しく思えることでも、しっかりと「勉強」を積み重ねていけば、いつか「答え」が見つかる――それが僕の基本的な世界観だった。

このような積み上げ型の考え方が優位な世界を、僕は「カイゼンの農地」と呼んでいる。

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