直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN

ここは険しい山々に囲まれた山岳地帯である。

無数と言っていいほどたくさんの山があり、それぞれの人が自分のビジョンを追い求めて山を登っている。彼らが登っているのは舗装されていない獣道で、途中で道が途切れていたり、ものすごい急勾配になっていたりしているようだ。

ほとんどの登山者たちは一人だが、なぜか誰もが楽しそうで、いきいきとした表情で登山を続けている。なかには、到底一人では登れなさそうな途方もない山(ビジョン)を見つけて、それに挑んでいる人もいる。

起業家や経営者、フリーランス、アーティスト、アスリート、研究者、宗教家、政治家といった人たちだ。それに共鳴したフォロワーたちが同じ山を登ろうとしているのも見える。山を登る人たちに共通しているのは、みんな「他人の目」を気にしていないことだ。

周囲の景色を楽しみながら「自分モード」の思考に没頭し、ひたすら目の前の道を一歩一歩、踏みしめている。

僕たちが目指すべきなのは、この大地なのではないか。

それに気づきはじめている人々がいる。デザイン思考へのシフトでも言及したダニエル・ピンクは『モチベーション3.0――持続する「やる気!」をいかに引き出すか』(講談社+α文庫)という本のなかで、個々人の「内発的動機」が重視される時代になりつつあると訴えている。

また、マインドフルネスのような瞑想が流行している背景にも、同じような事情が読み取れる。ウェブやモバイルデバイスによって関心が「外」に向きがちな時代だからこそ、“いまここ”にいる「自分」へと注意を引き戻すことに、人々が価値を感じるようになっているのだ。

こうしたニーズは、個人ベースのみならず、組織論の文脈でも生まれている。