共産党首脳陣の想定を
はるかに超えた経済の減速

 中国経済は成長の限界に直面していることが明確になっている。その背景の1つに、世界的なスマートフォン出荷台数の減少などを受けて、中国の製造業の景況感が著しく悪化したことがある。加えて、米中の貿易戦争が企業経営者や消費者のマインドを冷やし、投資と消費の両方に急ブレーキがかかっている。経済の減速は賃金や雇用の減少につながる。

 中国政府は、その状況を環境関連規制の緩和やインフラ投資で乗り切ろうとした。特に、冬場の大気汚染対策を緩めたことは、共産党にとってかなり思い切った策だった。中国では日々の生活のみならず生命への危機感が高まるほど、大気汚染が深刻だからだ。大気汚染の深刻さよりも、経済成長率の維持を優先したのである。

 しかし、中国経済に関して目立った改善は確認できない。景気が減速する中、中国本土の金融市場では“カネ余り”が発生している。それが、債務返済のための社債の発行などを支えている。中国の不動産市場には、いまだに投機資金が流れ込んでいる。中国経済の問題は一段と深刻化している。

 中国経済の先行きはかなり不透明だ。中国共産党は、この状況をどう打開すればよいか、妙案を見いだせていない。全人代では減税と社会保険料の引き下げ(計2兆元)、インフラ投資(2兆1500億元)が発表された。景気対策の内容は従来と変わりなく、真新しさに欠ける。本来なら政府は、構造改革を進め債務問題を解決しなければならない。中国では経済の専門家から構造改革が必要との指摘が増えている。共産党もそれはわかっている。

 構造改革を進めると、一時的に失業や企業倒産が増える。政府への不満や批判は一段と強まるだろう。それは習近平国家主席にとって受け入れられるものではないはずだ。中国政府はインフラ投資と減税などの負担軽減によって目先の不満を抑えることを優先せざるを得なくなっている。