公立福生病院も、2013年に腎臓病総合医療センターを設置し、院長にセンターの方針を伝えたことで承認を受け、特に倫理委員会を開催してこなかったという。

 この点について、前千葉県立東金病院院長で、現在千葉県循環器病センターで臨床研修アドバイザーを務める平井愛山(あいざん)氏は「公立病院は税金が投入されているため、透明性の確保、および、説明責任の遂行という2つの義務があります。このため、倫理委員会の開催は必要です」と強調する。

 また、黒部市民病院(富山県)腎センターの吉本敬一センター長は「全身状態が悪く、安全に透析治療が実施できないが、終末期とまでは言い難い患者が増えています。小規模の透析施設で倫理委員会が成立しない場合は、地域の病院と合同で検討会を開いたり、倫理審査を委託したりなど、病院と診療所、病院と病院の連携で対応する方法もあります。特に、医学的に透析が著しく困難な症例以外は組織内や透析医療チームのみで抱えるべきではありません」と指摘する。

 同学会は、「倫理委員会を開けないときはチーム医療での合意でもいい」と定めている。その場合、前述の平井氏は「病院ガバナンス(経営における合意形成等のシステム)の基本として、第三者も入る倫理審査委員会でプロセス・ワークフロー(手続き、*4)・ツール(患者への説明時の資料等)を事前に検討・承認を得ておくことが不可欠です」と助言する。

*4 ワークフロー:チームメンバーの構成・開催方法・検討項目と判断基準・決定のプロセス・倫理審査委員会への報告等

患者の治療に対する考えは
変えられる

 さらに報道では、公立福生病院の女性患者が透析治療をやめたことで症状が悪化した時期、前言を撤回したが、医師は苦しさを取る治療をして亡くなったとされている。

 日本透析医学会の提言を読むと、「自己決定の尊重」の項に「患者の判断能力がなくなっているときは、判断能力があった時期に本人が書いた事前指示書が希望の治療とケアの方針として尊重される(*5)」という趣旨が記載されている。このため、公立福生病院の医師は、死期が近づいた患者の意思より、それ以前に署名した意思確認書の内容を重んじた、あるいは縛られたのではないか。

 この意見確認書は「事前指示書(AD=Advance Directive)」と呼ばれる書面で、患者の意識が低下し、コミュニケーションができなくなった場合、人工透析治療の見合わせ、および、人工呼吸器や心臓マッサージ等の医療ケアについて、あらかじめどうしてほしいかの希望を示す。