日本の義手の普及率はたったの2%。理由は、極めて限られた企業でしか商品製作されないため100万円以上と高額で、しかも障害を隠すために作られていることが当事者に不評だからだ。近年、3Dプリンターの登場で、物作りの民主化、物作りのハードルが下がり、当事者とデザイナーが“魅せる義手”を創り始めた。(医療ジャーナリスト 福原麻希)
肩関節と腕の離断で引きこもり
仲間との物づくりが扉を開く
特定非営利活動法人(NPO法人) Mission ARM Japan(ミッション・アーム・ジャパン、以下、MAJ)では、上肢に障害がある人(先天的に腕が短い、腕に変形がある、事故や病気で肩や腕を切断した等)とエンジニア、デザイナー、医療関係者等が集まり、生活の中で「こんなものがあったらいいな」という物を創っている。
2015年からの活動では、これまで「ファッショナブルな筋電義手」「ビュッフェで料理を皿に盛るための義手」「洋服をおしゃれに着こなす肩パッド」「子ども用の片手で遊べるなわとび」「片手で遊べるフェンシング」などを作ってきた。
リサーチャー/デザイナーの竹腰美夏(みなつ)さん(25歳)がMAJに参加したきっかけは、大学院でデジタルファブリケーションによるギプス製作について研究していたからだった。
「デジタルファブリケーション」とは、コンピューター上でデジタルデータを作り、3Dプリンターでの造形(立体の製作)やレーザーカッター等で木材やアクリルを切り出し、物をつくる技術のこと。竹腰さんはコンピューター上で、ギプスのサイズを簡単に変更できる3Dデータの設計支援システムを開発していた。
MAJのミーティングに参加し、いろいろな人と話しているうちに、竹腰さんはギプスでなく、「義手」のほうに興味を持つようになった。