だが、こうした政府の動きに対して、民間企業の人事関係者からは、恨み節ばかりが聞こえてくる。「場当たり的で、ナンセンスだ。霞が関のお役人は、現場の実情を理解していない」(大手メーカー)、「確かに、罰金の額は民間企業と同じだが、本質的な問題が解決するとは思えない」(大手金融機関)などと、はなはだ評判が悪い。

 現在、障害者雇用納付金制度は、組織の形態を問わず、100人以上の常用雇用者(1年以上の勤続者)を抱える企業は、全て対象となる。2018年4月より、民間企業に科せられた法定雇用率は、2.0%から2.2%に引き上げられた(数年後には、3.0%の水準に近付けられる)。

 この2.2%を達成できなかった企業は、制度の運営主体である独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から、1人に付き月額5万円(年額60万円)の納付金を徴収される。一方で、達成できた企業は、同じく月額2万7000円の調整金(事実上の報奨金。年額32万4000円)が支給される。

 高齢・障害・求職者雇用支援機構は、厚生労働省の有力外郭団体の1つだ。地味な存在を装ってはいるが、常用雇用者100人以上の企業に対し、労働基準監督署並みに厳しい“抜き打ち検査”も行う。

 その対象は、建前上は常用雇用者100人以上の全企業が対象だが、厚労省は全ての組織に対して強権を発動するのではなく、重点ターゲットを定めていると言われる。

 あるIT関連企業の人事担当者は、こう打ち明ける。「障害者雇用の不足人数が2桁(10人。年間600万円)を越えると、厚労省の直接的な介入が始まる」。その後、改善がなければ、厚労省のホームページで企業名を公表される。実質的な脅しであり、見せしめである。

 厚労省は、自らは非難の矢面に立つことなく、外郭団体を通じて制度を運用している。この制度は、企業における障害者雇用を進めるために、未達成企業から吸い上げた納付金を達成企業への調整金に回すという前提で設計されており、実質的に税金には依存しない「金のなる木」として機能してきた。