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近年、日本人が海外に移住したり、逆に外国籍の人が来日して定住したりするケースが増加している。それに伴い、生活面でのトラブルなど社会問題も増加えているが、実は「税」の世界でも同じことが起きている。とりわけ富裕層はその資産規模から、一旦、税務調査による追徴課税が生じると多額になり、生活が一変するような事態にもなりかねない。連載『富裕層必見! 資産防衛&節税術』の第5回では、国税局資料調査課(リョウチョウ)OBの税理士が、国際的な課税の側面から、富裕層のみならず中小企業の経理担当まで、注意すべき5つのポイントを解説する。(税理士・元国税「富裕層管理」チームOB 八幡谷幸治)
国税の裁量の幅が大きく
「居住者」認定で多額の追徴課税も
近年、グローバル化の進展に伴い、日本人が海外に移住したり、逆に外国籍の方が来日して定住(名目は研修となっていても、実質的に移民に近い形態)したりするケースが増加してきている。
それに伴い、生活面でのトラブルが増えて社会問題化しているが、実は「税」の世界でも同様のことが起こっている。所得税法における、日本に「生活の本拠」を置く「居住者」と、日本国外に置く「非居住者」の区分を巡って、国税による包囲網が厳しくなっているのだ。特に富裕層の場合、その資産規模から、一旦、税務調査による追徴課税が生じると多額になり、金銭面だけではなく心理的にも影響が大きく、生活が一変するような事態にもなりかねない。
そこで国際的な課税の側面から、富裕層が注意すべき5つのポイントを順に述べていこう。
〈1〉居住者か非居住者かどうかの判定
居住者とは所得税法により、「国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上の居所を有する個人」をいう。居住者に該当する場合、国外所得に対しても課税されるとともに、累進課税で課税されることとなるため、非常に多額の税負担となることが多い(居住者・非居住者との区分に加えて、居住者の中には、「外国籍で、日本における滞在期間が5年以下」である個人は、非永住者と呼ばれ、国外源泉所得については、日本に送金されるまで課税を受けないという区分がある点にも注意が必要だ)。
また、住所については、住民登録していなければ非居住者・していれば居住者というわけではなく、以下の要素を総合判断して事実認定されるため、不確定要素が大きい論点である。
・住居
・職業
・生計を一にする配偶者その他の親族の居所
・資産の所在など
なお、税務調査の際には、上記の項目のうちどの項目を重視するかによって結論が異なるため、非常に不安定要素が大きい、つまり国税の裁量による課税の余地が大きい状態となっており、非常に問題のある状態が長年続いている。こうした都合のいい項目だけを取り上げることを「チェリーピッキング(いわゆる『いいとこどり』などと呼ぶこともある。
因みに、企業に勤める勤務者が、海外関連会社に出向したようなケースでは、「国外において継続して1年以上居住することを通常必要となる職業を有する場合には、非居住者と推定する」という規定がある。これは、出向契約書の契約期間で判断することとなり、判断しやすい基準となっている(海外では「アサインメントレター」と呼ばれることが多い)。
なお、事例によって税務訴訟となり、納税者が勝利するようなこともあったり、修正申告として早期決着するようなケースもあったりするが、納税者の金銭的・心理的負担を考えると、事前にきっちりとしたプランニング・調査を受けた場合には納得できる範囲で早期決着を目指す(落としどころを模索する)のも一つの選択肢かもしれない。
・いわゆる「武富士事案」(2011年2月18日 最高裁判決)
・サッカー選手課税事案(2024年3月22日 報道記事)
次ページでは、残る4つの注意すべきポイントを一挙解説する。富裕層はもちろん、中小企業の経理担当や中小企業の顧問税理士さえ関係するテーマもあるので、ぜひこの機会に学んで備えてほしい。







