本来なら「今日、離脱」のはずが……
混迷から抜け出せない英議会
英国は、ロンドン時間3月29日午後11時にEU(欧州連合)から離脱する予定だった。しかし、それは4月12日まで2週間延期された。
それまでに英下院が、昨年11月に合意した協定案を容認するか、離脱の再延期に向けた新たな行動計画をEUに示さない限り、交渉が決裂することになる。「なし崩し的なノーディール」を回避するために、英下院が責任ある決断を下すことができるか、事態は今まさに正念場を迎えている。
英国のメイ首相は3月20日、EUのトゥスク大統領に書簡を送り、従来ロンドン時間3月29日午後11時とされたEU離脱の期日を6月30日まで延期するように要請した。EU首脳は翌21日のサミットでこの問題を協議したが、EUは6月末までの延長を拒否した一方で、4月12日まで2週間の猶予を与えた。
4月12日は、5月23日から開始される欧州議会選挙の6週間前に当たる。それを超えて英国が離脱交渉を延長したい場合、英国は欧州議会選挙に参加する必要があるという立場をEUはとっている。そのため、英国は離脱の再延期に向けた新たな行動計画を4月12日までに示さなければならないというのが、EUの要求だ。
3月27日に英下院は、EU離脱に関して過半数の支持が得られる代替案を模索するための示唆的投票を実施したが、8つの案全てで反対票が賛成票を上回った。メイ首相は自身の辞任と引き換えに協定案への賛成を呼びかけたものの、下院の支持は得られなかった。同時に、土壇場になっても英下院が依然分裂している様相が浮き彫りになった。
離脱協定案の採否のタイムリミットは本来3月29日であったが、事実上4月12日までに延びたと考えられる。審議の結果、4月12日までに下院が協定案を容認すれば、英国はEUとの合意に基づく離脱を5月22日に実施することになる。他方で、4月12日までに協定案が可決されない場合、英国は離脱の延期に向けた新たな行動計画を示す必要がある。