長期延期の可能性が浮上
バックストップが争点に
3月14日、英議会において、欧州連合(EU)からの離脱の期日を従来のロンドン時間3月29日から6月30日へ延期することが、賛成412、反対202の大差で可決された。ただし20日までに、EUと合意に達した離脱協定案が議会で可決されることが条件になった。否決の場合は、1年以上の長期にわたる協議の延長をEUに要請する模様だ。
当初の離脱期限が迫る中で、英議会での審議は混乱が続いていた。一方で、ノーディール(無秩序な離脱)を回避したいというコンセンサスは、与野党の立場を超えて議会で着実に醸成されていた。1月に離脱協定案が再度否決された頃から、議会の水面下では離脱の期日延長に向けた調整が図られていたものと見られる。
ただしメイ首相は、離脱期限の長期延長を回避するため、EUとの合意に達した離脱協定案の可決を条件に、6月30日まで離脱を延期する動議を提案した。議員らは当初抵抗を見せたものの、とりあえずは首相案を受け入れ、延期の道の確保を優先した。今後の争点は、離脱の期日がどれだけ延期されるかに移った。
なお、いずれの選択が採られたとしても、3月21日のEUサミットに諮られ、EU側の対応が決まる。事態の混乱を避ける観点から、EUとしても英国の要求を容認する見通しである。節目ごとに事態の延期という当面の解決策が採られてきた英国のEU離脱であるが、またしても同様の解決策が採られようとしている。
離脱の期日延長に関しては、それが長期化することで離脱協議そのものが進まなくなるリスクが、かねてから指摘されてきた。そのため期日の延期が図られる場合、メイ首相やEU各国の指導者たちが期日を明確にすると共に、延期の回数も1回に限定する方針を明示するものと見られていた。
ただ下院、特に保守党に所属する議員の多数が依然こだわりを見せる北アイルランド問題(英領北アイルランドと隣国アイルランドとの間に物理的な障壁を設けることを回避すること)が、3ヵ月間の期限延長で解決する見通しはまるで立っていない。争点となっているのが、バックストップ(安全策)の在り方である。