日本の四国のスーパーマーケットでの取り組みもある。スーパー、顧客、古紙回収事業者の三者がウィン・ウィンの関係をつくり上げた事例である。
古紙回収事業者は古紙回収ボックスにセンサと無線通信モジュールを取り付け、古紙の量をリアルタイムで量れるようにした。そうすることで、顧客がどれだけ古紙を持ち込んだのかが遠隔からわかり、いま現在古紙回収ボックスにどれだけの古紙がたまっているかがわかる。そのデータを見てどのタイミングで回収しに行けばいいかがわかるので、回収コストを以前の3分の1にまで抑えることができた。
この古紙回収ボックスをスーパーに設置し、顧客が古紙を持ち込むとスーパーのポイントがもらえる仕組みもつくった。顧客に付与するポイントは、古紙回収事業者の回収コストの削減分の一部を還元する。
スーパーは顧客の来店頻度を高めることが期待でき、顧客はポイントをもらえ、古紙回収事業者は無駄な回収作業を減らすことができる。「三方よし」の仕組みを、古紙回収ボックスを少しスマート化しただけでつくり上げた事例だ。
いずれのケースも市場規模やインパクトは小さい。しかし、地味だからといっておろそかにしていると、デジタル化に取り組む他の企業に差をつけられ、やがて競争力を失う。その結果、生産性の差は指数関数的に開いていくことになる。
デジタル化で収益増をとげた欧米スポーツ業界
欧米のスポーツ業界は、有力な選手をかき集めるためだけではなく、競技の質を高めるためにも莫大な資金を注ぎ込む。デジタル化についても、豊富な資金力を背景として意欲的な取り組みを積極果敢に行っている。
アメリカンフットボールの事例である。
試合で選手が身にまとうウェアにタグを付けることで、選手の位置、動き、運動量といったすべてのプレーをデジタル化している。いままでのスポーツは、純粋にアナログの世界だった。監督やコーチは選手の動きを目で見て選手に指示を出していたし、観客は選手のプレーを目で見て楽しんでいた。
ここにデジタルが入ったことによって、新たな価値が生まれ始めている。監督やコーチは、選手の動きがデジタルデータで把握できるようになったことで、戦略の構築に役立てられる。選手の運動量もわかるので、選手それぞれの怪我のリスクが把握でき、怪我をしないためのトレーニングを取り入れるタイミングを客観的かつ効率的に指示することもできる。