新しいリアルデータを入手できる環境が整いつつある。現場の創意工夫によって、リアルな世界のありとあらゆるものをデータ化し、経営改善や変革につなげることができるようになってきた。

 リアルデータには、モノから発生するデータだけではなく、スポーツなど人間の行動から生み出されるデータも含まれる。あるいは、地すべりと関係するがけのデータなど自然現象もその一部である。

 リアルな世界から生成されるデータは、製造業、農業、土木、都市などあらゆる産業セグメントにわたる。現在のウェブ企業が対象としているウェブデータとは異なる新しいデータであり、現時点で膨大な量のリアルデータを収集している企業は存在しない。まさにこれからというフェーズにあり、誰にでも勝利をつかむチャンスがあるのがリアルデータの世界である。

回収コストを7割削減した「スマートゴミ箱」

 リアルデータの具体例を見てみよう。

 資源ゴミなどを定期的に回収するケースで、回収すべきゴミが少ないと、人件費や燃料費などの損失につながる。反対に、回収すべきゴミが多すぎると、一度で回収しきれず、再度回収に出向かなければならない。回収するゴミの量がわかれば、適切なタイミングで効率的に回収できるようになる。

 アメリカのフィラデルフィア市では、街中にある500個のゴミ箱を、ビッグベリー(BigBelly)が提供する「ビッグベリーソーラー(BigBelly Solar)」に置き換えた。ビッグベリーは、ゴミの蓄積状況を量るセンサ、太陽光発電と無線通信機能を備えたゴミ箱、管理用クラウドサービスをセットで提供している。

 従来のゴミ箱からスマートゴミ箱に替えたことで、ゴミの回収頻度が週に7回から2回にまで減った。それによって、年間約2億3000万円だった回収コストを、約7300万円まで7割も削減することに成功した。

 ビッグベリーソーラーは1セット50万円から70万円、500個を購入した初期コストは約3億円だった。回収コストの削減額は年間約1億5700万円なので、スマートゴミ箱設置に関わる初期費用はおおむね2年で回収できる計算だ。ビッグベリーソーラーには、ゴミが一定量を超えると自動的に圧縮するタイプもあり、今後はゴミ箱にカメラなどを取り付けることで新たなサービスを検討中だという。

 フィンランドのエネボ(Enevo)が提供するのは、無線通信機能を内蔵した、超音波によってゴミの量を計測するセンサである。ゴミ箱にネジやマグネットでセンサを装着するので扱いも簡単だ。ゴミの量だけでなく液体の量も計測できるセンサなので、燃料タンクにも応用できる。

 エネボはクラウドのデータ分析に力を入れている。センサから入手したデータを分析し、満杯になる時期を予測し、回収ルートも提示する。