文系だから読めないが通用する時代ではなく、「ビジネススキル」としての「数字を読む能力」は求められています。ましてや、経営者は財務戦略を敷くにあたり、「数字が読めない」では、通用しません。新刊『財務諸表は三角でわかる 数字の読めない社長の定番質問に答えた財務の基本と実践』から財務戦略の基本をわかりやすく紹介。先代から事業を引き継いだ2代目社長の質問に答えていく形ですすめます。

(下町工場株式会社2代目社長からの質問)
「やはり銀行と付き合っていかないと潰れやすい会社になってしまうんですね。そうなると銀行の考え方を理解しないといけないと思うんですが、銀行はうちの財務諸表をどのように見てるんですか?」

 経営者が、銀行の財務諸表の見方を理解しているかどうかは、事業拡大のスピードを大きく左右するため非常に重要です。会計事務所任せにせず、以下の点をチェックしましょう。

P/L(損益計算書)で見られるポイント

 P/Lでは、本業の利益が一番重要視されます。P/Lの「経常利益」です。ただ、単純に経常利益がプラスになっていればいいという問題でもなく、銀行は最低3期の数字の動きを見てトレンドを読んでいます。今後の返済余力があるかを分析するので、売上が縮小傾向だったり、収益性が落ちていたりすると、融資を縮少する必要があると判断しなければいけないからです。

 さらに、粗利率に大きな変動はないか、販管費に大きな変動がないかなどを分析し、B/Sで架空売上がないかを確認するのと同様に、粉飾や過度な節税をしていないかの確認をP/Lでも行います。

銀行は、返済余力があるかきちんと見ている

 特にお金が出ていかない会計上の費用である減価償却費は、赤字のときには計上しないという会社もありますが、残念ながら銀行はわかっています。減価償却費が計上されていなかったり、過度に少なかったりする場合には銀行の側で計算して、利益を減らしてしまうので注意が必要です。

 また、経常利益を最も重視するため、経常利益の後に今期だけ特別計上される保険金収入や固定資産売却益などの特別利益はあまり重要視しません。あくまで本業で毎年利益が出ていて、この先も利益が出そうなのか、返済ができそうなのかを見ています。