東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の横尾隆医師
東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の横尾隆医師 Photo by Motokazu Sato

名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを紹介する。今回は第6回。「腎臓再生の研究」で世界的に知られている東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の横尾隆医師を紹介する。

人工透析歴20年
闘病する男性のつらい日常

(あと3年で、腎臓再生が100万円ぐらいでできるようになるって本当かな。でも、その治療が俺のところまで回ってくるのはだいぶ先なんだろう。それまで生きていられるかな)

 2018年夏、神奈川県在住の男性(65歳)は、週刊誌の記事を読みながら呟いた。

 読んでいたのは、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の横尾隆先生たちによる腎臓再生の研究が、「あと3年で実用化も夢ではない」ところまで来たという記事だった。

 男性はかれこれ20年間、人工透析を受けてきた。週に3回病院へ通い、1回あたり4時間、ベッドに横になり、機能を失くした腎臓の代わりに機械を使い、全身の血液をろ過してもらう。

 大地震が起きようが、台風が来ようが、サボるわけにはいかない。血液中に毒素が溜まり、放置すれば死に至るからだ。過去、仕事の都合で何度か、透析の間隔があいてしまったことがあったが、むくみで顔の輪郭がぼやけ、どす黒く変色した自分の顔にぎょっとした。とてつもないだるさがあり、頭痛もする。

「俺の腎臓はポンコツだ」と改めて実感したのだった。

 当初勤めていた会社の社長は、透析治療になったことを告げると、困った顔をしながらも「安心して治療してくれ。何も心配いらないよ。無理なく仕事できるよう体制を調整しよう」と励ましてくれた。