英国での原発建設計画の凍結を発表した1月の記者会見で、日立の東原敏昭社長は「投資をここで止めるということ。経済合理性の判断条件が解消すれば、凍結を解除する可能性はある」と述べた。

 断念でも中止でもなく、「凍結」。会見でのこの表現について、日立は経済産業省や首相官邸と事前に調整していたフシがある。 

 中西氏が率いる経団連は、会員の大企業の意見を吸い上げて政府に伝え、政策に反映させるのが主な役割だ。

 政府との関係悪化は、できる限り避けたい。政府が原発輸出推進の旗を下ろしていない以上、あからさまに反旗を翻すようなことはできないというわけだ。

 さらには英国政府への配慮もある。

 英国には老朽化した原発が多く、2030年までに14基が稼働を止める予定になっている。順次、原発を新設して置き換えていかないと、電力の供給に不足が生じかねない。

 日立が建設をあきらめれば、その問題が一気に現実味を帯びる。

 一方、日立側にも英国に鉄道車両の新工場をつくり、2015年から生産を始めたばかりという事情もある。

 ここを拠点に欧州各国に輸出する構想だったが、英国がEUを離脱することになれば、輸出時に関税がかかるようになり、欧州市場を狙った戦略は修正を迫られる。

 工場の採算性を維持するには、英国内向けの車両を多く受注するしかない。英国政府との関係がこじれれば、その受注に響きかねない。

 日立内には、ホライズンプロジェクトも「英国政府から十分な資金支援があれば、凍結を解いて着工できる」(幹部)という声もある。  

 しかし、鉄道車両工場という「人質」をとられたままで、巨額の資金支援を引き出す交渉がどこまでできるのか。

 逆に不十分な支援で採算性が厳しいのに着工を迫られたり、撤退する代わりに理不尽な英国内での投資を求められたりすることも考えられる。

海外事業のリスク
メーカーと政府で温度差

 三菱重工のトルコでの原発建設計画も、実は似た状況だ。