投資行動を決定する
「確証バイアス」とは

 行動経済学に「確証バイアス」という言葉がある。自分の考えに合う、都合の良い情報だけ集めて自分の考えを補強することをいう。対面型証券会社が今でも一定のシェアを確保している理由が、実はこの「確証バイアス」にあるのではないかという気がしている。

 筆者が証券会社の店頭に座って来店する顧客の相談を受けていた頃、来店した顧客との間でこのようなやりとりがよくあった。

顧客:「初めて投資するのだが、何か良い株はあるかね?」
私 :「そうですねえ。何か今お考えのものはおありですか?」
顧客:「いや、特にないけど、例えば○○工業なんかどうだろう?」

 多くの場合、既にこの顧客は「○○工業」を買おうと決めているのだ。そこで念のために意見を聞いてみたいから、こうやって尋ねているのである。こういうときに、優秀な営業マンは「ああ、それは良いですね!お客様も良い銘柄に目をつけられましたね。それはきっと上がると思いますよ」と答える。要はお客さんの背中を押してあげるのだ。そうすると顧客は満足し、「親切に相談してくれる良い営業マンだ」と感謝されることになる。

 ところが、その営業マンが自分なりに勉強していて、「○○工業」があまり良くないと思っているとしよう。この場合、仮にそのまま顧客に「ああ、それはダメですよ!」と言ってしまうと、顧客は極めて不機嫌になるだろう。いくらダメな理由を丁寧に説明しても、もはや顧客はほとんど聞く耳を持たない。確証バイアスにとらわれてしまっているため、自分の意見に都合の良いことしか聞きたくないからだ。多くの場合、「そうか、また来るよ」でおしまいだろう。

 しかもそれならまだいいのだが、場合によっては「あの営業マンは不親切だ」とさえ言われかねない。筆者も若い頃、自分の意見を顧客に言ったところ、その顧客とは全く意見が逆だったことがあった。もちろん相手は顧客なので、あくまでも感情を害されないように冷静に自分の意見を参考として述べただけだ。ところが後日、支店長のところに「あんな不誠実な営業マンは嫌だ。担当を代えてくれ」とクレームが来たことをよく覚えている。人間の感情とはそういうものなのだ。