森嶋はもう一度、出来る限り正確に理沙の言葉を優美子に伝えた。

「1兆円じゃなくて2兆円だった。ただし、これは今日午前中で動いた金だ。彼らの保有している国債はさらに多い」

「どのくらい」

「理沙さんは32兆円と言ってたが、ひょっとすると、持ってる国債はもっと多いかも知れない」

 おそらく、他の日本国債の外国人保有者とも組んでいるはずだ。

 優美子はスマートホンを出して、器用に指先を動かしている。

「現在の為替は1ドル86円。東証株価指数は715・92。昨日より7・68ポイント下がってる。これは、昨日のインターナショナル・リンクの発表が効いているのかしら。こんな国の国債なんて買う外国人がいるんだからね。格付けを下げるどころか、上げるべきよね」

 しゃべりながらも優美子は考え込んでいる。

「いずれにしてもユニバーサル・ファンドは、信じられない金を集めて動かしている」

「でも、30兆円以上のお金でしょ。国家予算なみ。いえ、これより少ない国家予算の国なんていくらでもある」

「どこかの国家が関係してるとは思えないか」

 何気なく口にした言葉だったが、森嶋の胸に意外と真実味を帯びて響いた。

 優美子も再度考え込んでいる。

「中国が――」

 声を出したのは2人同時だった。お互い相手の言葉を確かめるように見つめ合った。