6年間ほど順調に政策の仕事を中心にこなしていたのですが、残念なことに議員が落選し、上田さんは次の議員に仕えることになります。新しい議員も、政策立案能力に期待して上田さんを採用しました。上田さんのおかげで、委員会などで切れの鋭い質問もできるようになり、その議員の党内での評価も上がり、最初のうちはとてもうまくいっていたそうです。

 しかし、1年ほどたった頃から議員の様子が変わってきます。質問の打ち合わせをしていると、上田さんの書いた原稿を否定し、構成を変えようと言い出すことが多くなりました。あるとき、議員の言うことがどう考えてもズレていて、それを質問すると議員本人が恥をかくだけということがありました。上田さんは、議員のプライドを傷つけないようにやんわりと指摘しますが、それもまた気に食わないようで、結局まったく関係のないテーマで、本来答弁を書く官僚に質問まで作らせ、なんとか委員会を乗り切りました。

 その後も同じようなことが続き、上田さんは、政策の仕事をさせてもらえず、慣れない車の運転や名刺の整理などを命じられます。都心部の道が分からず、ナビに頼って運転していると、「その道は遠回りなんだよ」と怒鳴られ、後部座席からペットボトルを投げつけられたりもしたそうです。

 また、最後は必ず「“試験組”は頭良くても、運転とか選挙には使えねえよなぁ」と嫌みを言われていたそうです。そして、とうとう「車の運転で政策担当秘書の給料は多すぎるから、毎月オレに寄付しろ」と理不尽な要求をされます。しばらく回答を留保していると、突然「事務所内での人間関係に難がある」などという身に覚えのないことで反省文を書けと言われ、断ったところ解職されたそうです。

ケース2:桐谷さん(仮名)30代前半女性の政策担当秘書

 桐谷さんは、大学院在学中に政策担当秘書の存在を知り、試験を受け合格しました。研究の道を目指していましたが、大学で教職のポストを得るのはたいへん難しいものがあります。現実に生活していくことも考え、試験合格後の9月に早速アプローチしてきた衆議院議員と面接をし、修士課程修了後にその議員の事務所で働くことを決めました。現在、2人目の議員の下で働いており、秘書経験は7年になります。

 桐谷さんは、法律の専門知識はかなり高度なものを持っていたので、それまで社会人経験はなかったのですが、政策の仕事は確実に処理していきました。選挙区から国会見学に来る後援会や陳情に来る地方議員への対応も任されましたが、もともと人当たりがよく謙虚な性格の桐谷さんは、地元の人からも好かれ人気がありました。

 地元の秘書は、20~30年も秘書を務めているベテラン男性で、年齢も桐谷さんよりかなり上です。経験も浅くまだ20代の女性が、形式的には一番上の政策担当秘書に就き、かつ給料も自分たちより高いことを、地元秘書は快く思わず、議員に不満をぶつけていたようです。