カミングアウトしやすい友人関係、
カミングアウトしにくい職場と親子関係

 カミングアウトする際の心の障壁が最も低いのは友人関係でしょう。

 お互いにある程度気心が知れていて、共通する何らかのもの(趣味・スポーツなど)で関係が築けているならば、性的指向の違いで関係性が壊れてしまうこともないだろうと期待できます。もし、カミングアウトして拒絶されたとしても、新たな友人を作ればいいと割り切ることもできなくはありません(2015年に行われたNHKのアンケート(※1)でも、カミングアウトした相手は「LGBTではない友人」がトップでした)。

 例えば、話を合わせるために好きでもない異性のことを語ったりするなど、友人との間に偽りがあることでストレスを抱えるよりも、カミングアウトする方がより良い関係を築けるならば、それは当事者にとって幸せなことです。一時的な友人関係でなく、長く継続していく友達付き合いを望むのならば、なおさらカミングアウトする方がいいと考える人も多いでしょう。

 これが職場となると、カミングアウトする際の心の障壁が少々高くなります。

「結婚や交際関係の話題を振られた時に嘘をついて誤魔化さねばならない」
「もし同性愛者だとばれたら面倒なことになるのではないだろうか」

 と常に考えていることは大きなストレスになります。

 本当はカミングアウトしたいのだけれども、偏見を恐れるあまり諦めたり躊躇したりしている当事者も少なくありません。

 しかし一方、職場でカミングアウトすることで幸せに生きている人もいます。

 私の知人のある当事者は、入社試験の面接でカミングアウトして、入社後も周囲に特に隠さずにいたら全社的にも周知の事実となり、それが理由で特別にストレスを感じることもなく働いています。ゲイであることが評価の基準になることもなく、仕事を楽しみながら、順調に出世しているようです。

 会社によって社風も違いますし、トップや直属の上司、周囲の人のパーソナリティに左右される部分も大きいでしょうが、カミングアウトすることで職場でのストレスを軽減して幸せに働いている当事者は確実にいます。

※1 LGBT当事者アンケート調査/2015年10月実施