そして、カミングアウトの最大関門は、親でしょう。まだ歳の近い兄弟姉妹は心の障壁が幾分低いのですが、「親には言えない」という人は少なくないです。なぜなら、親の期待を裏切る、親を悲しませたくない、という気持ちが大きいからです。

(親が)望んでいるであろう結婚はできないし、孫の顔も見せられない。一人っ子なら家系が途絶えることになる。地縁・血縁関係が濃い地方で実家暮らしをせざるをえない長男や一人っ子の場合は、特にこのことが大きな障壁になってきます。最初からカミングアウトする選択を諦めざるをえない人もいます。

 30代が近づくと、地元の友人や親戚筋から結婚や出産の話が相次いできます。親と顔を会わせるたびに恋人や結婚の話を振られるのも仕方のないこと。カミングアウトする方がいいのか、それとも(親にとって)変わり者の独身主義者であると偽り続けるべきなのか、同性愛者にとっては人生の中でも最大と言っても過言ではない選択を迫られることになります。

 カミングアウトしてしまえば“結婚圧力”を跳ね除けてストレスを軽減させることはできるでしょう。実際、両親や兄弟姉妹と、カミングアウト後はより仲が良くなったと語る当事者も少なくありません。とは言え、カミングアウトがどのような影響を及ぼすのかは、両親の考え方やパーソナリティ、そして当事者である子供との関係性や、兄弟姉妹の考え方など、さまざまな要因が絡み合うことであり、一概に語ることはできません。

 ただ、確実に言えることは、カミングアウトを親が受け入れてくれることは、当事者にとって何よりの幸せだということです。両親ともが受け入れられないとしても、そのどちらかが(母の方がより理解してくれると語る人が多いようです)カミングアウトを拒絶しないで受け止めることは、友人や職場、学校で受け入れられることとは比べものにならないほど大きな勇気を与えてくれます。

最初から、職場にも家族にも
カミングアウトしないという選択もある

 最初から、職場にも家族にもカミングアウトすることを考えていない当事者も少なくありません。

 一部の友人にはカミングアウトしているものの、職場や家族には一切カミングアウトしていないという人は多いです。では、彼らはゲイとして生活していないのかというと、そんなことはありません。実生活でも、ネットを通じてでも、日本各地に(人によってはアジアや世界各地に)ゲイの友達・知り合いはたくさんいるし、ゲイの友人とリアルな交流を頻繁にしている人も少なくないのです。そういう彼らは、自分がゲイであることを否定せずに受け入れるどころか、ゲイ生活を謳歌していると言えるでしょう。