「論理に裏打ちされた戦略があってこそ、成功にたどりつける」――これがかつてのビジネスの常識だった。しかし「他者モードの戦略」は、いたるところで機能不全を起こしつつある。その背後で、いま、マーケットに強烈なインパクトを与えているのは、「根拠のない妄想・直感」を見事に手なずけた人たちだ。
そんななか、最新刊『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』を著した佐宗邦威氏は、いま何を考えているのか? P&G、ソニーで活躍し、米国デザインスクールで学んだ最注目の「戦略デザイナー」が語る「感性ベースの思考法」の決定版!!

昇進・転職・結婚…転機の荒波を乗り越える「錨」のつくり方

思考の「錨」を下ろす――偏愛コラージュ

他人からの依頼に応えたり、自分の外にある問題を解決しているとき、僕たちの脳は「他人モード」になっている。こうやって「自分モード」のスイッチを切ったまま日々を過ごしていると、僕たちは「何がしたいのか」を思い出せなくなる。「君はどう思う?」と意見を求められても、そもそも「自分がどう思うのか」すら、よくわからなくなる。

そういう人からは何か新しいことを発想したり、粘り強く考えたりする力が失われる。それだけならまだいいが、何かにワクワクしたり感動したり幸せを感じたりする力も、だんだん鈍っていく。

こうなると、なかなか厄介だ。

「他人モード」に由来する停滞感は、ネット時代に生きる僕たちの「生活習慣病」と言ってもいいだろう。このモヤモヤ感に心当たりがある人は、決して少なくないはずだ。

じつは、ビジネスや企業経営でも、同じことが起きている。安定して業績をあげている企業でも、売上・利益、株主、マーケット、競合他社など、「外部」ばかりを見ているうちに、「自分たちの原点」=「そもそも何がしたかったのか」を見失ってしまうのだ。すると、その組織からは不思議とエネルギーが失われ、それが数年後には経営にも響いてくるようになる。

こうした状況を打破するためには、「余白」をうまくデザインしていくことが必要になる。「妄想」が生まれるような「キャンバス」が用意されさえすれば、内発的な直感を生み出すのはそれほど難しいことではない。

むしろ、問題はそこからだ。