サンドイッチの具を選ぶように直感を信じる

 彼女はとにかく「ケーススタディ」を授業で多用していました。実際の企業の悩みを紹介し、みんなで考えるタイプの授業です。

 たとえば、オンラインの通販サイト。物を出品する店舗が、商品の写真をサイトに載せたい場合、その掲載料は無料にするべきか。

 サイトに載せる料金が無料だと店側はどんどん写真を載せて、サイトはカラフルになってデザイン性が高まります。しかしその場合、サイトを運営する企業は、写真掲載料を取るのと比べれば、収入が減ります。

 短期の利益の減少をとるのか、サイトのデザイン性が上がって長期的にブランドが向上することを選ぶのか。どちらを選択したとしても、おそらく答えとしては両方とも「正しい」のが難しいところです。では、どちらを選ぶか。

 答えのない教授の授業は、いつも白熱していました。その中でも、私は彼女の「サンドイッチの具」発言が忘れられません。

「もしみなさんがビジネスの世界に行かれるのなら、本当にどちらが正しいか分からなくて悩むときがあるはずです。そのときは、好きなサンドイッチの具を選ぶように、自分の直感を信じた方がいいのかもしれません」

 私は、なぜかその言葉をノートに書き留めました。

「正しさは人それぞれ」という彼女の教えと通じるところがあったからだと思います。ちょっとした雑談かジョークだったのでしょう。それでも、授業の終わりの方で彼女が言ったこの一言は、「ピンポイント人脈」を身につけるうえで重要なメッセージとなります。

理屈抜きの情熱が差別化の原動力

 ベストセラー「ストーリーとしての競争戦略」の著者として知られる、一橋大大学院の楠木建教授も、「経営者のエネルギーの源は『好き嫌い』だ」ということを語っています。

 経営判断や新規事業のアイデアに関して、それがビジネス的に成果を挙げるかどうかの「正解」を私たちは求めがちです。しかし案外、成功の秘訣は経営者の「好き」という気持ちなのかもしれません。

 楠木さんは『「好き嫌い」と経営』という本で、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長にインタビューしています。話を聞くうちに、柳井さんはとにかく「デカい商売が好き」だということが楠木さんには伝わってきたそうです。