ハーバードビジネススクールで経営史を教えるジェフリー・ジョーンズ教授は、日本が長寿企業大国であることを賞賛する一方で、日本の大企業が変われない現状を憂慮する。日本企業が今、取り組むべき課題は何なのか。最も注目する日本人リーダーは誰なのか。ジョーンズ教授に聞いた。
なぜ日本企業は失敗したのか
佐藤 ジョーンズ教授は長年、日本企業を歴史的な観点から研究されてきました。日本企業が今、抱えている課題は何でしょうか。
ジョーンズ 第一に、日本企業のマネジメント構造と決断のスピードには大きな問題があると思います。日本企業は階層的な構造になっているため、何かを変革するのにも多大な時間がかかりますし、経営陣の決断も非常に遅い。若者に裁量権が与えられない組織になっているのも企業の成長を阻害しています。
特に深刻なのが家電業界でしょう。アップルをはじめとする世界的なIT企業がどんどんイノベーションをおこす中、日本企業も急進的な変革に迫られていますが、「組織は変えられない、決断もできない」では日本企業が苦境に陥るのも無理はありません。
第二に、日本企業がいまだエンジニア主導であることです。1970年代、80年代は企業の論理でものづくりをしていればよかったかもしれませんが、現在は、消費者の視点から発想することが求められています。消費者は、機能、性能だけではなくデザインなどを重視して製品を購入するからです。