台湾の電車内台湾では紺色の優先席に若い人が座ることはまずない Photo by Konatsu Himeda

「礼譲(れいじょう)」という言葉がある。日本語でも普通語(北京語)でもほぼ同じで、「礼儀正しくへりくだった態度」(大辞泉)を意味する。簡単に言えば、「相手に譲る」ということだ。

 台湾では「相手に譲る」という空気が社会全体を包んでいる。この春に訪れた台湾で、筆者は人々が生活の中で実践する「礼儀正しさ」や「譲り合い」に驚かされた。まず衝撃を受けたのは、台北の地下鉄だった。紺色に色分けされた優先席は、高齢者が座らない限りたいてい空席のままだ。優先席だろうと普通の席だろうと、若者は積極的に座ろうとはしない。

 誰もが疲れているし、誰もが座りたい。「でも社会には優先する順序がある」というのが、台湾の人々の考え方のようだ。当然、高齢者が来れば“我先に”席を譲る。小さな子どもが座りたそうにしているときにも譲る。そんなシーンを何度も目にした。